綾里、吉浜両出張所廃止へ 利用者減少など受け8年3月末で 住民票の各種交付は郵便局へ委託検討
令和6年7月31日付 1面

大船渡市は、三陸町の綾里、吉浜両地域振興出張所を、令和8年3月末で廃止する方針をまとめ、29日の市議会全員協議会で示した。平成13年の旧三陸町との合併前から、地域の特殊性や
バランスなどを考慮して運営されてきたが、近年は窓口利用件数が減少しているほか、各種証明書のコンビニ交付が普及し、道路整備で移動時間が縮減されている。これまで出張所で取り扱ってきた戸籍、住民票、税務証明書の交付などに関しては、地元郵便局への包括委託を検討。市は本年度中の地区住民説明会を経て、7年度中の条例改正などを目指す。(佐藤 壮)

吉浜地域振興出張所
出張所は、平成元年に旧三陸町が設置。同13年の旧三陸町との合併に伴い締結された合併協定書では「現三陸町役場を支所として、住民サービスの低下をきたさないよう配慮する」「綾里、吉浜両地域振興出張所は、現状を維持する」とされている。
綾里の出張所は平成22年9月に整備された綾里地区コミュニティ施設・綾姫ホール内に、吉浜は同6年2月完成の吉浜地区拠点センター内にある。いずれも職員は2人体制。
主な担当業務は▽戸籍、住民票、印鑑登録証明書、税務証明書の交付や各種申請・届け出の窓口業務▽綾里地区コミュニティ施設・綾姫ホール及び吉浜地区拠点センターの維持管理と貸館業務▽期日前投票所の開設▽綾里診療所、吉浜診療所及び歯科診療所の運営に係る事務長職を兼務──となっている。
一方、近年は人口減少の進行や震災関連手続きの終了、マイナンバー制度の情報連携の開始などを受け、窓口の利用者数や取扱件数は年々減少。三陸沿岸道路や主要地方道大船渡綾里三陸線の整備で、三陸地区から市役所本庁への移動時間も短縮されて
いる。
窓口利用者を平成26年度と令和5年度で比較すると、綾里出張所は4162人から3090人、吉浜出張所は2995人から2205人と、各約26%減少。住民票証明書交付件数は綾里出張所が41%、吉浜出張所が53%それぞれ減少した。
廃止に向けては、市民周知や民間委託への準備期間を考慮し、令和7年度末とする。越喜来の三陸支所は現行通り存続する。
綾里、吉浜両地区への行政サービス提供を維持に向け、出張所で取り扱う戸籍、住民票、税務証明書等の交付や各種申請・届け出の受付等の窓口業務の一部は、綾里郵便局および吉浜郵便局への包括委託を検討する。郵便局への具体的な委託開始日や委託業務範囲は、日本郵便㈱と協議する。包括委託は、県内でも1自治体で導入実績がある。
綾里地区コミュニティ施設・綾姫ホールと吉浜地区拠点センターは、指定管理者制度を導入する方針。時期は8年4月からとなる。
両施設には国保診療所があるが、市は本年度新たに「地域医療懇話会」を設置し、地域医療全体のあり方や将来的な方向性について議論を深め、持続可能な地域医療の提供体制を探る方針。「三陸地区の診療所が担うべき役割・機能を改めて見直し、明確化・最適化したうえで、健全県営に向けた取り組みを進めたい」としている。
出張所に開設している期日前投票所は、市選挙管理委員会の協議で検討する流れとなる。災害時、両施設はこれまでと同様に、避難所として利用。地区本部も設けられる。
出張所廃止により、人件費で約2020万円の減額が見込まれる。一方、事務経費は郵便局への窓口事務委託、各施設に1人の通年勤務を見込む指定管理者料などにより、450万円程度の増額となる。
全員協議会の質疑では、外部委託に伴う情報管理の徹底を巡って論戦。別の議員からは「合併の合意事項であり、単なる行政の見直しとは異なるのでは。重みをどうとらえるか」との発言もあった。
これに対して、松川伸一総務部長は「合併から20年が経過し、東日本大震災やコロナ禍と社会経済環境が変わる中で、予想以上に人口減少が進んでいることも背景にある。合併協定書には(現状維持を)書き込んではいるが、時代の流れの中で、やはり、運営見直しを検討しなければならない」と述べ、理解を求めた。