鳥獣被害額が急増 5年度は1022万円 10年間で倍以上に
令和6年8月1日付 3面
住田町は、町内における令和5年度の鳥獣被害額をまとめた。同年度のニホンザル、イノシシ、ニホンジカなどによる被害額は1022万円で、前年度を396万円上回った。町内の鳥獣被害は3年度から急激に増加しており、町では防護網設置への補助、電気柵設置など対策を講じているが即効性はなく、今後も行政や地域が一丸となっての被害防止を進めていく考え。
町によると、5年度の鳥獣被害は10年前の平成26年の431万円からおよそ2・4倍に拡大。5年度の被害の内訳をみると、最も多いのがニホンザルによる364万円で、イノシシが268万円、ニホンジカが222万円などと続く。
平成26年度の被害はニホンジカによるものが316万円で約7割を占めていたが、有害駆除・捕獲、防護網設置など対策を進めたことでシカ被害は減少。一方で、同年度に被害報告のなかったニホンザル、イノシシによる被害が増加傾向にある。
町内の被害額は元年度は487万円、2年度376万円、3年度281万円と落ち着きをみせていたが、4年度に626万円、5年度に1022万円と急増しており、これはニホンザルとイノシシによる被害の増加が大きな要因となっている。
ニホンザルは平成27年度、イノシシは令和3年度にそれぞれ初めて町内での被害が確認され、当初は町内の一部の集落で発生していたが、現在は町内全域に広がっている。
このうち、イノシシは全国的にも生息域が拡大しており、町内では4年度から5年度にかけて一気に増加したという。このことは、耕作放棄地が年々増加することによって山と人里の「境目」があいまいになってきていることも、要因の一つとして考えられる。
町では鳥獣害対策として、農林業振興会などの団体が緊急的に行う防護網設置への補助金、電気柵の設置、GPSによるニホンザルの生息域調査などを展開。地域の農業者を対象に被害防止対策に関する研修会も開催している。
ただ、今後も人口減少や高齢化による耕作放棄地の増加が予想される中、行政だけや個人での取り組みには限界がある。被害の未然防止のためには圃場周辺の草刈りや地域を挙げた動物の追い払いなども必要で、町では「自分たちの地域を自分たちで守っていくため、町や関係機関、住民が一体となった被害防止に理解と協力をお願いしたい」と呼びかけている。