■能登半島地震被災地支援/きょう発災7カ月 恩返し胸に手差し伸べる 市長が被災自治体で課題とニーズ確認 民間会社は教訓伝承ツアーの造成協力
令和6年8月1日付 1面

東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市は、能登半島地震で最大震度7の揺れに襲われた石川県の被災地を官民を挙げて支援している。佐々木拓市長は7月下旬、発災後初めて現地を訪れ、被災自治体などから復旧の現状や支援のニーズを聞き取るなどした。観光コンテンツの企画・実施などを手掛ける陸前高田企画㈱(村上清代表取締役)は、能登半島で動き始めた教訓伝承のツアー造成をサポート。きょう1日で地震発生から7カ月。現地では息の長い支援が求められ、国内外から手を差し伸べられて立ち上がった陸前高田市の関係者は恩返しの意味を込め、可能な支援を模索している。(高橋 信)

教訓伝承ツアー造成に向けた講座で講師を務めた村上代表取締役(奥左)=中能登町
佐々木市長は7月24~26日、石川県七尾市、輪島市、能登町、珠洲市を訪問。震災後の復旧・復興業務に当たった土地活用推進課の髙橋宏紀課長と防災課の中村吉雄課長、1~2月に能登町に短期派遣された農林課の岸和也主事の3人が随行した。
一行は4自治体の市役所や役場で首長らと懇談し、現状と課題を確認。珠洲市では窓口で対応する職員など40人程度の人手が不足しているといい、支援のニーズもヒアリングした。石川県漁協輪島支所にも足を運び、海底が隆起した影響などで今も出漁できない被災漁港の現状も確かめた。
市は同月19日、市内各所に設置した募金箱で集めた義援金の全額を、珠洲市と輪島市に100万円ずつ、七尾市に79万8594円に振り分けて送金。市長は各自治体を訪問した際、義援金の目録を手渡し、市民らの思いを現地に直接伝えた。
市中心部の土地区画整理事業などを担当してきた髙橋課長は「津波被害が甚大だった当市とは違う課題を抱えていることを肌で感じた。今回訪問したことでつながりは得たので、これから復旧が進む中で何か助言できることがあればご協力したい」と話した。
佐々木市長は農林水産省職員時代の平成21年4月から23年3月までの2年間、石川県に出向した経験があり、1月の発災直後から能登に思いを寄せている。
市長は「震災後の業務に当たった職員にも同行してもらい、当市だからこそ可能なアドバイスはできたと思う。能登への職員長期派遣は難しいが、県内の市長会などと情報を共有し、一自治体では難しい支援を全体で考えられれば。温かな支援を受けて今があり、そのご恩を忘れずに市としてできうる支援を引き続き考えたい」と強調した。
陸前高田企画の村上代表取締役らは7月22~24日、能登半島中部にある中能登町を訪問。中能登スローツーリズム協議会が乗り出した地震の被災体験を伝える語り部育成のプロジェクトに協力し、復興ツーリズムのノウハウを伝えた。
滞在中にはツアーを特色づける地域資源などを探り、ガイドを練習する語り部育成講座が開かれ、村上代表取締役が講師を務めた。今冬にはモニターツアーが行われるといい、陸前高田企画はツアー実施前に再度現地を訪ね、支援に当たる。
村上代表取締役は「能登の復興は険しい道のりだ。弊社は震災が起きて生まれた会社であり、能登での地域再興に向けた新たな動きを心から応援している。力になれることがあれば積極的に参画したいし、『三陸から思い続けている』という気持ちを伝えたい」と話した。