秋サケ 今季も不漁継続か 県水産技術センターが回帰予報発表 本年度も「最低水準」の見込み

▲ 本年度も厳しい漁況が続くとみられる秋サケ

 県水産技術センターは、本年度の秋サケ回帰予報(9月~令和7年2月)を発表した。本年度の回帰数量は、東日本大震災前の平均値(平成20~22年度)の1%未満で、過去最低に終わった昨年度並みの水準になると予測。沿岸定置網漁業の主力とされてきた秋サケの不漁は年々深刻さを増し、現場からは「壊滅に近い」との声もあがる中、危機的状況の脱却に向けた対応が急がれる。(菅野弘大)

 

 令和5年度の年齢別漁獲数量から、本年度の回帰数量を推定。予報によると、回帰数量は4万4000匹、136㌧で、過去最低となった5年度実績の4万4000匹、133㌧とほぼ同水準となる見込み。震災前の3カ年平均である768万匹、2万5053㌧と比較しても1%に満たない低水準とみている。
 予測では、5年度に比べて5歳魚が減少し、4歳魚が中心となる。震災前の平均値と比べても、依然として極めて少ない見通しで、回帰の見込みは12月上、中旬が中心。河川遡上は、11月上旬と12月中旬がピークで、5年度との比較ではおおむねいずれの時期も上回る見込みだが、種卵確保が難しい状況は続いていくとみられる。
 回帰数量の低迷について、同センターでは、放流時期の春先に海水温が高く、稚魚が生き残ることができない状況を指摘。「冷水性のサケは5~13度が適温だが、冷たい親潮が南下してこず、適温の日数が少ない。動物プランクトンなどのえさの問題や、太平洋を北から南に流れる潮流も、サケの北上を阻害する要因となっている」と分析する。
 5年度における沿岸漁獲は2万8272匹(85・55㌧)で、11万3720匹(299・18㌧)だった前年度の24・9%と大幅に減少。河川捕獲は1万4933匹(44・9㌧)で、前年度の30・2%にとどまった。これらを合計した4万4299匹(133・7㌧)は過去最低となり、壊滅的な状況に陥っている。
 大船渡市魚市場への累計水揚げ数は1390匹で、前年度比6993匹(83・4%)の減少となったが、1㌔当たりの平均単価は1259円で、前年度を200円(19%)上回った。
 気仙の河川捕獲数(海産を除く)をみると、吉浜川が74匹(メス34匹、オス40匹)、綾里川が92匹(メス53匹、オス39匹)、盛川が544匹(メス247匹、オス297匹)、気仙川が3581匹(メス1621匹、オス1960匹)。いずれも前年度の4割に満たなかった。
 採卵数は吉浜川が3万9000粒で、前年度比85%減。盛川は42万2000粒で、同61%減。気仙川は371万7000粒で、同60%減。気仙全体では、417万8000粒で、各漁協での採卵計画数合計174万粒の24%にとどまった。
 回帰数量の減少により、各河川でのふ化事業も厳しい運営が続く。
 盛川漁協の佐藤由也組合長は「状況が良くても昨年と同じ数量か、もっと厳しいのではないか」と現場の肌感を示し、「事業の不振は組合の収入に直結することであり、厳しい予報を淡々と眺めてはいられない。有効な代替策もまだなく、定置網はどこも苦しいのでは」と懸念する。
 また、事業を拠点化して取り組んでいる稚魚育成も、少ない回帰状況に電気料金、えさ代の高騰が重くのしかかる。「やれば赤字になる状況。サケ事業がこのままの状態であれば、漁協経営にもさらに大きな影響が及ぶ」とも語る。