被害防止へ基礎知識学ぶ 県がイノシシ対策研修会開催
令和6年8月4日付 2面
県環境生活部自然保護課主催のイノシシ対策研修会は3日、住田町役場町民ホールで開かれた。近年、急速に生息域が拡大して農林業被害が増加する中、大船渡、住田両市町の関係者らが効果的な対策や捕獲方法など基礎知識について学んだ。
研修会には両市町の担当職員や鳥獣被害防止対策実施隊、猟友会などから合わせて約60人が出席。
はじめに、松岡大晟県自然保護課主事が県内におけるイノシシの状況を説明。それによると、県内の捕獲頭数と農業被害額は平成23年度以降、年々増加。市町村有害捕獲数は、同年度が2頭だったが、25年度に22頭となり30年度には100頭、令和2年度に422頭、3年度に624頭、4年度に746頭と急増。これに伴い農業被害額も拡大し、平成23年度は107万円だったが、令和4年度には4068万円にまで増えた。
追跡調査の結果や環境解析、生息好適地解析の結果も示され、県では今後、研修会の開催や捕獲マニュアルの普及などによる狩猟者の育成、捕獲情報・農業被害情報の収集と分析、豚熱対策などを進めていくとした。
引き続き、合同会社東北野生動物保護管理センター(宮城県仙台市)の研究員・瀬戸秀穂さんが「イノシシの生態と効果的な対策および捕獲方法について」と題して講義を行った。
この中で瀬戸さんは、イノシシは過去にも東北地方に広く分布していたが豚コレラの流行や高い狩猟圧によって減少。近年、積雪量の減少や狩猟人口の減少によって生息域を回復・拡大させて北上してきていると紹介。
また、繁殖力が強く、1歳半で繁殖が可能となり、多くのメスが2歳で初産し、1回当たり平均4、5頭を出産すると解説。農業被害は稲、イモ類、トウモロコシ、カボチャ、豆類、ソバなど多岐にわたり、庭や花壇の掘り返しのほか、人を襲う場合もあるとして注意を促した。
対策としては生息環境管理、個体数管理、被害防除の三つを組み合わせることが重要であると呼びかけた。野生生物が好む環境を集落周辺から無くすために農地周囲のやぶを刈り払いしたり、生ごみ、放棄作物を適正管理するなどの環境管理、ネット柵やトタン柵、ワイヤーメッシュ柵、電気柵などによる侵入防止の被害防除について詳しく説明し、箱罠、囲い罠による効果的な捕獲方法も示した。
このほか、ICT(情報通信技術)を用いた捕獲効率向上と省力化なども紹介。出席者は被害の未然防止を図ろうと真剣な表情で聴講していた。