町長任期1年切る 現職の神田氏「まずは目の前の仕事を」 3選への態度表明に注目

 住田町長の神田謙一氏(65)=下有住=は、2期目の任期満了(来年8月4日)まで残り1年を切った。同氏は次期町長選について「まずは目の前の仕事に注力する」と明確な態度は示していない。令和3年の前回選は無投票に終わっており、今回も現時点で新人擁立に向けた動きはない。2期連続無投票か、8年ぶりの競争戦となるか、現職の態度表明や対抗馬の動きに注目が集まる。(清水辰彦)

 

神田謙一氏

 神田氏は日本獣医畜産大学大学院修士課程修了。昭和59年に住田町農協に入り、合併した陸前高田市農協を経て、平成19年住田フーズ㈱取締役生産部長。24年同社常務取締役に就いた。
 4期を務めた多田欣一氏(79)=世田米=が勇退を表明し、16年ぶりに「新リーダー」を選ぶこととなった平成29年の町長選に初出馬。多田氏の支持者を取り込みながら選挙戦を進め、企業経営に関わってきた人脈と経験も生かし、町議を辞して臨んだ新人との一騎打ちを僅差で制した。
 神田氏は就任1期目から、「住民生活の基本である『医・食・住』の充実」を重点に掲げ、町政を運営。2期目に入り、医療分野では「在宅医療等のあり方検討会」を設置し、医療資源の限られる町内において関係機関と連携しながら誰もが住み慣れた地域で暮らせるよう、在宅医療を推進している。
 「食」では、関係機関と連携しながら、土壌改良効果や二酸化炭素排出量削減が期待される「高機能バイオ炭」の実証試験などの耕畜連携事業を展開。「住」に関連しては、仮設住宅跡地に仕事と学び複合施設(愛称・イコウェルすみた)を整備して人材交流拠点とすることで、関係人口拡大とそれによる若者の移住・定住促進を図っている。このほか各種施策において独自のカラーを打ち出しつつ、自治体の枠を超えて近隣市と連携も取りながら町政運営に当たる。
 一方で、前町長時代から最重要課題となっている木工団地2事業体の問題は、いまだ終結していない。町から巨額の融資を受けながらも破産した三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)に関して、町が農林業振興資金貸付基金からの貸付金や利息、遅延損害金の支払いを連帯保証人らに求めた裁判が令和2年から行われている。提訴から4年がたとうとしているが決着はついておらず、裁判は長期化している。
 また、町内では毎年約100人ずつ人口減少が続き、基幹産業である農林畜産業の担い手不足、空き家や耕作放棄地のさらなる増加が懸念されている。近年、頻発している自然災害への備え、拡大する鳥獣被害対策など、地域課題は山積、細分化しており、次の4年間を担うリーダーには、多様化・複雑化する課題への柔軟な対応が求められてくる。
 町内では前回町長選だけでなく、昨年の町議選が3期連続で無投票に終わった。「現職がいい、悪いではなく、選挙がないと政治に緊張感がなくなる」と懸念する声は一定数あるものの、まち全体でみれば選挙戦への機運が高まらないのが現実だ。
 来年度は新たな町総合計画の初年度となることから、重要な〝スタートダッシュ〟のかじ取り役として現職の続投を期待する声も聞かれるが、神田氏は「本年度は現総合計画のまとめの年であり、来年度から新たな5カ年計画がスタートする。まずは目の前の仕事に注力する」と述べるにとどめており、態度表明時期は早くても年明けになるとみられる。
同氏の後援会(泉金一会長)幹部によると、会としての動きはまだ本格化しておらず、役員も高齢化していることから、まずは組織の再構築を図ったうえで出馬要請などを検討していくという。
 任期満了に伴う次期町長選は昭和30年の町制施行から19回目となる。令和3年の前回選挙は「7月13日(火)告示、同18日(日)投票」の日程が組まれており、同様に7月下旬の日曜日の投票が有力とみられる。
 8月1日現在、同町の選挙人名簿登録者は4178人(男2046人、女2132人)。前回選告示日と比べて419人少ない。