きょう今泉「けんか七夕」 東京出身の柴崎さん 地元住民と力合わせ作業
令和6年8月7日付 7面

陸前高田市気仙町今泉地区で7日に開かれる「けんか七夕」の準備作業に、今年同市に移住した男性が加わっている。夏の伝統行事を途絶えさせないため限られた人員で毎年開催し続けている地元有志の熱意と、外部の人を快く受け入れる寛大さに心を打たれ、作業場に連日足を運ぶようになった。山車と山車をぶつけ合う豪快な祭り本番に胸を弾ませながら作業に汗を流している。(高橋 信)
準備に加わっているのは、東京都出身の柴崎航さん(29)。7月初旬から七夕を主催する気仙町けんか七夕祭り保存連合会(佐々木冨寿夫会長)のメンバーと一緒に山車作りに励んでいる。
同月に市地域おこし協力隊員に就任し、業務以外でも「陸前高田のことを知りたい」と思っていたという柴崎さん。転居先の市営住宅・今泉団地の住民や区長から紹介されたのがきっかけで、けんか七夕に携わるようになった。
けんか七夕は、アザフで彩られた山車2台を激しくぶつけ合うのが呼び物の祭り。山車に長さ約15㍍のスギの丸太「かじ棒」を取り付ける際、フジのつるを使用するなど山車作りの工程も唯一無二で、柴崎さんにとっては作業の一つ一つが新鮮で楽しかった。
「一から住民の力のみで手掛けており、東京でもこんな祭りは見たことがないと思った。連合会の皆さんの熱意を肌で感じたし、何より優しい人ばかりで、何も分からないなりに手伝いたいと思った」と、気付けばのめり込んでいた。約1カ月間、ほぼ毎日作業場の七夕倉庫に顔を出すようになった。
新たな仲間が加わり、佐々木会長(71)も喜ぶ。「毎日来て非常に熱心だ。すっかり俺たちの仲間だ」とほほ笑む。
連合会の人手と運営資金の不足は、年々深刻さを増している。佐々木会長は「七夕がなくなったら、今泉の活気がなくなる。だからこそなんとか踏ん張っているが、自分たちだけでは限界がある。出身地にかかわらず若い人が携わってくれるのはありがたいことだ」と話す。
柴崎さんは「あえて過去の七夕の動画とかは見ていない。けんか七夕がどのように繰り広げられるか全く想像できないし、ものすごく楽しみ。住む場所が偶然今泉となり、運が良かった」と、笑顔で本番を待ちわびる。