水揚げ本州一の誇りかけ 三笠丸船団がサンマ漁へ出港 「出船式」で安全と大漁祈願(動画、別写真あり)

▲ 多くの人々に見送られながらサンマ漁に向けて出港する三笠丸船団

 大船渡市赤崎町の鎌田水産㈱(鎌田仁社長)が所有する大型サンマ漁船6隻の「出船式」は8日、大船渡町の同市魚市場で開かれた。南側岸壁に並んだ199㌧の三笠丸船団6隻が、多くの人々に見送られながら出港。サンマ漁の予報は今年も「低水準」と厳しい様相を呈し、公海操業の解禁も10日ほど早まった中、水揚げ本州一のまちとしての誇りをかけて漁に臨み、大船渡への初水揚げは23日(金)を見込む。(菅野弘大)

 

 全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)は今年から、サンマ漁の解禁日を公海に限定して8月10日に統一。主漁場となっている公海では早くから外国漁船が操業していることや、11月に入るとしけの影響を受けやすくなる状況などを考慮しての決定で、これに伴い出港も前倒しとなり、同社では末広がりで縁起の良い8月8日に出船式を設定した。
 すっきりとした青空が広がり、絶好の出港日和となった同日、南側岸壁には数々の大漁旗に彩られた大型サンマ漁船6隻が集結し、海のまちらしい圧巻の光景が広がった。
 式では、鎌田社長が、外国漁船の操業状況や、漁獲枠の問題などによって解禁日が前倒しされた経緯に触れながら「会社にとっても、この地域にとってもサンマは欠かせない魚。みんなが楽しみに待ち望んでいる魚を、安全操業第一の意識でこの地に運んできてほしい」とあいさつ。渕上清市長も「サンマはまちを勢いづけ、元気の源。大大漁と乗組員の皆さまが元気に帰ってくることを願う」と激励した。
 市議会の伊藤力也議長、大船渡魚市場㈱の千葉隆美社長も乗組員らにエールを送り、各船の漁労長6人に地元園児らが花束を贈呈。船団を代表して、第十八三笠丸の髙橋昇司漁労長(65)が「いよいよサンマ漁が始まる。まずは安全に、そして大漁を目指す」と決意表明を述べた。
 歌謡ステージに続き、同社の鎌田和昭会長の合図で6隻が順番に離岸。大漁旗とカラーテープが風になびく中で大海原へと繰り出し、集まった関係者らも応援の声をかけながら、船が見えなくなるまで手を振り続けた。
 乗組員の父親を見送った菊地美莉愛さん(盛小5年)は「けがのないように頑張ってきてほしい」と、家族とのしばしの別れを惜しんだ。
 出港した各船は北海道に寄港し、10日(土)未明にも漁場となる公海へと向かう。髙橋漁労長は「解禁日が早すぎる気もするが、決まったことだからやるしかない。漁場に行ってみないと分からない部分もありつつ、みんなで漁をして、新鮮で大きいサンマを大船渡に届けたい」と意気込んだ。
 国立研究開発法人水産研究・教育機構水産資源研究所が発表した、今年8~12月における道東~三陸海域などでのサンマ長期漁海況予報では、来遊量は昨年に続き低水準の見通し。漁場は三陸海域よりも北東に離れた北海道東側の公海を中心に形成され、1歳魚(漁期中に体長29㌢以上になると予測されるもの)の割合も昨年並み。平均体重は昨年を下回る90~110㌘が主体となる見込みで、魚体は小ぶりなものが多くなるとみられる。
 全さんまによると、昨年における全国の総水揚げ数量は2万4433㌧(前年同期比36%増)と過去最低だった前年を上回り、金額は101億1702万円(同2%減)。1㌔あたりの単価は414・1円で、前年同期を162円(28%)下回った。
 大船渡市魚市場への水揚げは、数量が3877㌧(同27%増)で、金額は18億5419万円(同7%減)。三陸海域での漁獲など好材料もあり、全国的に見ても数量は持ち直したが、魚体の小型化や漁場が遠いことによる鮮度落ちなどが響き、価格は伸び悩んだ。