七夕体験 10回目で幕 スーパー㈱カスミ(茨城)が従業員向けに実施 祭りに参加し運営支える

▲ 引き手として山車の運行を体験する新入社員ら

 スーパーマーケットを展開する㈱カスミ(本社・茨城県つくば市、塚田英明代表取締役社長)は、7日に陸前高田市で開かれた「うごく七夕」と「けんか七夕」に新入社員らが参加する「陸前高田七夕まつり体験学習」を行った。東日本大震災後、両七夕の山車制作費の寄付をはじめ、一過性ではない物心両面の支援を続けてきた同社。体験学習は10回目を迎えた今回で最後となり、従業員と住民が夏の伝統行事を通じて絆を深めた。(高橋 信、阿部仁志)


 新入社員や外国人技能実習生ら約140人が参加。6日に陸前高田市入りし、同日は祭りの会場づくりを手伝ったほか、高田松原津波復興祈念公園内の震災津波伝承館を見学した。
 7日は両七夕の山車の練り歩きなどに参加し、地域コミュニティーの維持や活性化に不可欠な祭りの魅力に五感で触れた。翌8日は祭りの後片付けにも汗を流した。
 新入社員の磯部拓人さん(23)は「世代を超えてつながり合うことができる素晴らしい祭りだった。震災の脅威も直接学ぶことができ、自分事と捉えることができた」と関心を寄せた。
 新入社員を引率した同社販売本部の佐藤伸賢さん(33)は、平成27年の新人研修で同体験学習に参加。「華やかな本番だけでなく、事前の準備、翌日の後片付けもセットにして経験することで、伝統行事を続ける重要さと大変さを肌で感じることができる。仕事にも通ずるところがある」とうなずいた。
 震災や高齢化などを背景に、毎年担い手不足に悩まされていた中、カスミによる100~200人のマンパワーは、祭り運営側にとっても心強い存在だった。
 うごく七夕の荒町七夕祭組の村上一郎会長(65)は「人手が足りない各祭組を中心に手を差し伸べていただいた。今回で一区切りということだが、『個人的にまた来たい』と話してくれる社員さんもいて、うれしく思う。このご縁を大切にしたい」と感謝の念を募らせる。
 けんか七夕を主催する保存連合会(佐々木冨寿夫会長)は令和3年、同社に感謝状を贈呈し、地元側の思いを伝えた。佐々木会長(71)は「茨城からの温かな思いは大きな励みとなった。感謝してもしきれない。今後も七夕を続けることが恩返しにもつながる」と語った。

けんか七夕会場で交流したカスミとマイヤの関係者

 同社は平成23年度から令和3年度までの10年間、陸前高田市の子どもたちの夢を応援しようと、復興支援カレンダーを毎年作成・販売。益金は七夕の山車制作や同市の教育復興に役立て、寄付額は累計1億4646万円に上った。新入社員ら向けの体験学習は平成24年度から、新型コロナウイルス禍に伴う中断期間を除いて実施してきた。
 同社によると、来年度以降は気仙内外でスーパーマーケットを展開する㈱マイヤ(本社・大船渡市、井原良幸代表取締役社長)がカスミに代わって両七夕への参加を継続する。マイヤの米谷春夫代表取締役会長は「あくまで可能な範囲の中でという前提だが、どのようなことができうるか検討したい」と話した。
 カスミ取締役で、人事総務管理本部マネジャーの平松弘基さん(62)は「知識は忘れることがあっても体験は消えない。われわれにとってもかけがえのない縁を築けた。新入社員には地域とつながる大切さを感じ取ってもらい、業務に生かしてほしい」と願いを込めた。