外国人避難 より迅速に 赴任直後の外国語指導助手らと意見交換 「地理不案内者」の課題把握へ(別写真あり)

▲ おおふなぽーと周辺にある標識などを確認する参加者

 大船渡市は19日、市内を訪れる外国人観光客をはじめとする地理不案内者の対策に係る課題を把握しようと、新たに赴任した米国出身の外国語指導助手(ALT)や国際交流員(CIR)向けの防災教室・意見交換を実施した。防災教室では徒歩避難の重要性を確認したほか、意見交換では、情報入手や標識の分かりやすさなどが話題に。津波災害時の「犠牲者ゼロ」に向け、迅速に避難するために必要な体制も探った。(佐藤 壮)

 

 初の取り組みで、今回は各小中学校に出向くALTや、市の各種イベントにも参加するCIRを対象とした。ALTはウォード・アメリア・エリザベスさん、レイーモンド・エレン・レネーさん、バレラ・アマンダ・アシュリーさんの3人で、CIRはシンベン・アンドリューさん。調整役は、来月任期を終える現CIRの岡本大芽さんが務めた。
 冒頭、防災管理室の伊藤晴喜次長が「気を付けなければいけない自然災害への備えや、防災への対応を学んでもらいたい」とあいさつ。担当職員が地震や台風への対応などを説明し、緊急地震速報や大津波警報発令時に鳴る音なども実際に紹介した。
 引き続き「荒れ狂う海」として、東日本大震災をはじめ過去の津波災害をまとめた映像を視聴。海だけでなく川も遡上して市街地を襲う恐ろしさを目に焼き付けた。津波と洪水・土砂災害の各ハザードマップを目にして、居住地の地理的環境の危険性にも理解を深めた。
 また、震災の浸水区域内にある小学校では、高台まで徒歩で移動する避難訓練が行われていることなども話題に。比較的小さな揺れの地震でも、大津波が襲った過去の災害に関しても説明を受けたほか、伊藤次長からは「落ち着いて行動することが大切」とアドバイスされた。
 市職員とともに、おおふなぽーと周辺を歩き、各地にある避難誘導標識を見上げる時間も。ALTからは「映像では車で避難している人が多かった。実際にはどのように避難すればいいか」といった質問があり、職員は「渋滞や、車同士が衝突する危険性もある。基本的には、歩いて避難を。間に合わない時には、おおふなぽーとのように近くにある高い施設に逃げてほしい」などと答えた。
 後半の意見交換では、市側から外国人が観光で訪れた時の情報入手手段や、サイレンをはじめ警報音の聞き慣れやすさ、迅速に避難するための環境づくりなどを問いかけた。
 情報入手に関して、ALTの一人は「スマートフォンになると思う」と発言。サイレン後に響く日本語については「聞きやすかったが、各地から響き渡るとどうか」などの意見もあった。
 避難行動に関しては「周りが避難しているのを見て、自分も同じ行動をとると思う」、避難標識は「100%ではないが、これを見れば分かりやすい」「『津波がここまで来た』よりも、どこに逃げるかが分かる標識が増えると良い」といった声が寄せられた。
 市は先月、津波避難対策検討会議を設置。津波災害時の「犠牲者ゼロ」に向け、東日本大震災の経験や教訓も取り入れながら、行動方針決定を目指す。会議の所掌事項は▽津波災害時における自動車避難の課題抽出▽自動車避難(避難行動要支援者の避難を含む)▽事業従事者の避難対策▽観光客等の地理不案内者の避難対策──としている。
 今回の意見交換を、次回の会議議論や今後の行動指針に生かす方針。伊藤次長は「標識が有効であることなど、参考となる意見が多かった。国が違えば印象が変わることも考えられるので、次回の開催も考えたい」としている。
 市内の今年7月末における人口は3万2259人で、前年比で773人減少。一方、外国人は380人で、76人増加している。コロナ禍で大きく減った外国人観光客も回復傾向にある。