多彩なプログラムで絆育む 陸前高田と名古屋の中学生 12年目の交流事業(別写真あり)
令和6年8月22日付 7面

陸前高田市と愛知県名古屋市の中学2年生同士による「絆交流」は20、21の両日、陸前高田市内で行われた。東日本大震災をきっかけに両市教委が結んだ絆協定に基づく事業の一環で、本年度で12年目を迎える相互交流。およそ600㌔離れた両市の中学生がさまざまなプログラムを通じて絆を育み、震災で甚大な被害を受けたまちで災害への心構えなども学んだ。(高橋 信)
本年度は名古屋市36人、陸前高田市20人の中学2年生が参加。20日は広田町・石浜海岸でマリンスポーツのSUP体験を楽しんだあと、高田町のキャピタルホテル1000で夕食を兼ねた交流会を行った。
この中で、名古屋市の中学生は地元の名物や名所、中学校で行われている防災・減災の取り組みなどをグループごとに発表。中学生の間で人気の漫画作品やSNSで話題沸騰中のスイーツを当てるクイズでは両市の生徒が異口同音に答え、「約600㌔離れた私たちでも同じことはたくさんありましたね」などと同い年の縁をかみしめた。
締めは、両市の末永い友好を願って制作された踊り曲『いこまいたかた、あばっせなごや』を全員で踊り、大いに盛り上がった。
21日は、高田町の奇跡の一本松ホールで歓迎セレモニーが開かれ、生徒たちは背中に「絆」と書かれたTシャツ姿で出席。名古屋市の生徒たちは山田市雄教育長、佐々木拓市長から歓迎の言葉を受けた。
その後、㈱陸前高田アメイジングトリップ・ビューローの村上清代表取締役が講演。絆交流事業10年を機に結成された過去の同事業参加メンバーでつくる「teamS」の松田由希菜さん(20、早稲田大3年)=陸前高田市出身=と、竹内一将さん(24、岡山大大学院修士2年)=名古屋市出身=が登壇し、〝センパイ交流団員〟としてメッセージを伝えた。
松田さんは自身が参加した平成29年度の絆交流を振り返り、「名古屋の人たちの本気で震災や防災を学ぼうという姿勢から、『同じ中学2年生がこんなにも頑張っている。ならば自分にもできるのでは』と刺激を受け、前向きに頑張ろうと思うきっかけとなった。みなさんも互いを高め合える交流をしてほしい」と願った。
竹内さんは「絆交流で学んだ『当たり前は当たり前ではない』という言葉が今も好き。みなさんも今回の交流でさまざまな学びや気づきを得ると思うが、それを今後の人生を歩むうえでも大事にしていってほしい」とアドバイスした。
高田第一中の後川優太さんは「はじめは緊張したが、名古屋の人たちがとてもフレンドリーに話しかけてくれて仲良くなれた。南海トラフ地震が起きる可能性があり、陸前高田の防災の取り組みを伝えたい」と話した。
名古屋市・円上中の松本まどかさんは「陸前高田の人たちがみなさんとても温かくて、とてもうれしかった。東日本大震災のことはよく分からなかったが、自分事のように捉えることができた」と充実感をにじませた。
両市教委は震災翌年の平成24年に絆協定を、両市は26年に友好都市協定を締結。絆交流は毎年実施されており、夏は名古屋市の中学生が、冬は陸前高田市の中学生が相手のまちを訪問している。