陸前高田に日蘭友好の広場 川原川公園内に整備 子どもらの憩う場目指す 10月5日、開所式
令和6年8月30日付 1面

東日本大震災の被害に心を痛めたオランダ・デンヘルダー市の市立海外植物園「ホルトゥス・オーファーゼー」の関係者らの思いを起点とする日蘭友好の広場が、陸前高田市高田町の川原川公園内に整備されることが決まった。オランダ産チューリップの球根を植えるほか、子どもらが遊べる憩いの空間をつくる構想。9月下旬からデンヘルダー、陸前高田両市の有志らが整備作業に入り、10月5日(土)に現地で開所式を行う予定。(高橋 信)

広場が整備される川原川公園
名称は「日蘭友好広場 Meeting of Streams(ミーティング・オブ・ストリームス)」。陸前高田市民有志が発足させた「陸前高田日蘭友好協会」(高橋勇樹会長)と、同植物園が整備する。29日、同協会の役員が市役所を訪れ、佐々木拓市長に事業概要を報告した。
同協会や市によると、広場は奇跡の一本松ホール東側駐車場そばの川原川右岸に整備し、広さは公園全体(約3・97㌶)の2割に当たる約0・8㌶。
世界的に有名な生産国として知られるオランダからチューリップの球根1万個を取り寄せ、一部をエリア内に植える。
整備を記念し、同植物園に飾ってあった「赤石」を乗せた石のモニュメントを設置する。モニュメントに取り付ける広場の名称を記した看板には、スマートフォンなどで読み取ると、広場がつくられた経緯を確認できるQRコードも印字する。
「子どもたちが楽しく遊ぶ場」をコンセプトとし、オランダでも親しまれているという「ケンケンパ」を遊べる石をオランダ式、日本式の別々に配置する。 このほか「船型」の石のモニュメントも2基設置し、一つは震災復興のシンボル「奇跡の一本松」を、もう一つは同植物園の方角を示すように置く。
整備費を含む総事業費は、約750万円を見込む。オランダを拠点とする蘭日協会からの寄付や、同植物園で開かれたイベントでの募金などを充てる。
造園作業はデンヘルダー市民と同協会メンバーらが行う。球根を植える作業などには地元の子どもたちや市民の手も借り、「みんなでつくり上げる広場」を思い描く。
双方の縁は、震災翌年の平成24年にオランダ・アムステルフェーン市で開催された震災特別追悼式で、陸前高田市の伝統的な和太鼓演奏が行われたのが、きっかけで生まれた。演奏を聴いたデンヘルダー市のチューリップ生産者が陸前高田市民を励まそうと、2万5000個のチューリップの球根を贈るなど交流が始まった。
27年には、同植物園の代表団が同市を訪れ、市に友好広場を建設する構想を説明。それ以降、植物園は整備費に充当する寄付金集めに乗り出し、今回、10年近く温めてきた構想がようやく実現することとなった。
佐々木市長は「オランダの人たちの思いを日蘭友好協会の皆さんがしっかりと受け止め、形になり、大変喜ばしい。川原川公園は市民から愛されており、新たな魅力としてオランダの思いが加わることはありがたいことだ」と感激した。
高橋会長(46)は「オランダの善意から生まれた広場を後世に伝えるため、少しずつファンを増やして協力しながら管理していきたい。将来的にはデンヘルダー市と陸前高田市による姉妹都市提携などに発展してほしい」と見据える。