多様化する経営相談 大船渡商議所 4~7月で総数1400件超 目立ち始める事業承継や廃業・解散

▲ 地元事業者の多様な相談に応じている大船渡商工会議所

 大船渡市の大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)の今年4~7月における経営相談では、事業承継や廃業・解散に関するものが50件を超えるなど、これまで以上に相談内容が多様化している。東日本大震災の復旧・復興事業収束やコロナ禍による厳しい経営状況に加え、後継者がいないことから事業を整理するといった動きも広がっている。商議所では引き続き、きめ細かい対応を続けながら、持続可能な経営や雇用を支える。(佐藤 壮)

 

 商議所が4~7月に対応した相談件数は1321件。このうち約1000件は電話対応を含めた窓口対応で、残りは巡回指導先で受けてきた。業種別では小売業が309件と最多で、以下建設業207件、サービス業189件などが続く。
 一つの相談で内容が複数に及ぶこともあり、経営相談総数は1462件に上る。コロナ禍や燃油・物価高騰に伴う補助金対応に迫られた前年度よりも少なくなっているが、ほぼ例年に近いペースで推移している。
 相談の多くは「経営一般」に分類される営業概況で、各事業所の経営面や売り上げに関するものが4割を超える。10人未満の小規模事業者は、源泉徴収した所得税などを半年分まとめて納める特例があることから、6月は税務の相談が約180件あった。
 一方、今年実施されている定額減税に関する相談は少ないという。
 本年度、相談で目立ち始めているのは事業承継や廃業・解散。事業承継は7月末までで21件、廃業・解散は33件。廃業・解散は1カ月で10件を超えることもあり、1事業者が何度も相談するケースもある。
 営業不振や資金繰りの厳しさだけでなく、中長期的な受注量の減少や後継者がいないことを見越して廃業・清算しようとする動きも見られる。商議所では、事業承継や企業合併に関しては専門機関につなぐなどしながら、従業員の雇用確保や取引先となっている地元事業所への影響を最小限に抑えるよう調整にあたっている。
 米谷会頭は「多岐にわたる相談が寄せられているが、廃業・解散に関するものは7月だけで15件と多かった。時代のすう勢で仕方ないことだと思う半面、あまり増えてくるのは、地域経済とすれば困ったもの」と話す。
 市と商議所が6~7月にかけて実施した同商議所会員事業所対象のアンケート調査をみると、昨年同時期の売り上げ状況との比較で「減少」と回答した割合が65%に上る。また、今年9月までの売り上げ見通しも「減少」が過半数を占めている。
 人員の充足状況については「過不足はない・多少不足しているが事業運営に特段支障はない」が61%。「非常に不足している」(人手不足を理由とした廃業等、今後の事業継続に不安がある)は3%、「不足している」(事業運営に支障が生じている)は13%となっている。
 震災復興需要の収束やコロナ禍、物価高騰の影響が続き、地域活力の低下が顕在化。人口減少にも対応した持続可能なまちづくりに向け、地元事業所を支える商議所の存在感が高まっている。
 会員数は1500超に上り、小規模事業者や中小企業者が多い。商議所では引き続き、経営支援では会計や税務、金融。事業承継、雇用、デジタル化、働き方改革、インボイスの各対応に加え、政府や自治体の政策に基づく補助金活用支援などに当たる。経営課題が多様化・複雑化する中、ともに考える「伴走型」の支援業務に力を入れる。