パリでの勇姿 古里に希望 パラ・トライアスロンPV 寺澤さん(末崎町出身)がガイドで出場(別写真あり)
令和6年9月4日付 7面

「パリ2024パラリンピック競技大会」のトライアスロン競技は2日、フランス・パリのアレクサンドル3世橋周辺を発着点とするコースで全種目が行われた。男子PTVI(視覚障害)には、大船渡市末崎町出身のプロトライアスリート・寺澤光介さん(30)=サニーフィッシュ所属、東京都=が、日本代表の東京2020パラ銅メダリスト・米岡聡選手(38)=三井住友海上=の競技パートナーとして出場し、ガイド役としてレースを完走。盛町のリアスホールでは、米岡・寺澤組を応援しようとパブリックビューイング(PV)も行われ、集まった市民や寺澤さんにゆかりのある人々が、懸命にゴールを目指す2人に惜しみなく声援を送り、世界の大舞台で躍動する勇姿から大きな感動と希望を受け取った。(菅野弘大)
トライアスロンのロングディスタンス(長距離)を主戦場に、国内外の大会で活躍を見せる寺澤さん。昨年8月から米岡選手のガイド役を務め、パリパラ大会でのメダル獲得を目標に約1年間、ともにトレーニングに励んできた。
今大会のパラトライアスロンは当初、1、2の2日間で行われる予定だったが、スイムの会場となるセーヌ川が、悪天候による水質汚染が懸念されることなどを理由に、競技日程を短縮。1日に全種目を実施することとなったが、雨による水質悪化で2日に延期されていた。
市では、寺澤さんを応援しようと「寺澤光介選手応援プロジェクトチーム」を立ち上げ、活躍を後押しする取り組みを展開。応援旗への寄せ書きや関係者による応援メッセージ動画の作成を行い、市全体での応援ムードを高めてきた。PVも取り組みの一環で、同日は市民や関係者ら約100人が参集した。
冒頭、渕上清市長は「大きな夢の実現に向かって、思う存分力を発揮してほしい。声の限り、みんなで応援したい」とあいさつ。会場のスクリーンでは、「私が生まれ育ったまちの皆さんからメッセージをいただき、レースに向けて不安もあるが、応援を励みに気合を入れて、米岡選手と頑張りたい」とする寺澤さんからのビデオメッセージが流れ、大きな拍手に包まれた。
レース開始前には、競技関係者らによるトークセッションが開かれ、県トライアスロン協会副理事長の大志田誠さん(49)、水泳のパラアスリートの村田奈々さん(40)らが、レースの見どころやルール、コースの詳細などを競技者目線で紹介。競技中もレース展開を実況し、初心者でも分かりやすい観戦環境でのPVとなった。
パラトライアスロンは、スイム750㍍、バイク20㌔、ラン5㌔の「スプリントディスタンス」コースで実施。12組が出場した男子PTVIで米岡・寺澤組は、スイムパートをトップで上がり、スクリーンにその姿が大きく映し出されると、割れんばかりの歓声と拍手が会場に響き渡った。
米岡・寺澤組はその後、バイクパートでアクシデントに見舞われるなど、徐々に順位を落とし、総合順位は11位。目標としていたメダル獲得はならなかったが、最後は2人で高々と手を上げて無事にゴールし、日本代表として国民に感動と勇気を与えた。
寺澤さんは、末崎小、中、大船渡高と地元のmacスイミングスクールで水泳を続け、トライアスロンと出合ったのは中学3年のころ。高校2年で東日本大震災に遭い、自宅も被害を受けたが、高校最後の1年間は盛岡南高で水泳に打ち込み、卒業後は強豪の日体大に進学して本格的にトライアスロンのプロを目指した。トライアスロンスクールの運営などを行う㈱サニーフィッシュ(東京都)に入社し、ショート(短距離)からロングに転向すると、全日本宮古島大会の連覇をはじめ世界大会でも活躍するなど、国内屈指のプロ選手に成長した。
macで寺澤さんを指導していたコーチの上野由美さん(56)は「スタートから泣けたし、スイムも1位で素晴らしかった。トライアスロンを始めた時から応援していて、頑張る姿を見られて良かった。これからもけがなく、自分のベストを更新し続けられるように、ずっと応援していく」とたたえた。
寺澤さんの祖父・悦夫さん(88)は「光介のこれまでの努力は分かっているし、精いっぱいやってくれた。最後のゴールの顔を見て安心した。本当によくやった」とねぎらいの言葉を送っていた。