移住促進策など議論 市政策アドバイザー会議

▲ 陸前高田の地域活性化に向けさまざまな分野で意見を交わしたアドバイザー会議

 陸前高田市政策アドバイザー会議は2日、市役所で開かれた。市の活性化策について外部有識者から助言・提言を受ける場で、初会合の1月以来2度目の開催。今後の方策のもととなるアイデアを出し合い、災害に強いまちづくりを売りにした移住・定住の促進、IT・デジタルサービス企業の誘致、県立高田高の国際コース(仮称)新設などを巡り、活発に議論した。(高橋 信)

 

 政策アドバイザーは市外の6人で、政策的事項、専門的事項に関する助言・提言役として、市が昨年12月に委嘱。元財務省職員でPwC税理士法人審査室長の佐々木浩氏、元農水省事務次官で東京農業大特命教授の末松広行氏、民間総合シンクタンクの㈱日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏らが務めている。
 オンラインを含め、すべてのアドバイザーが出席。はじめに佐々木拓市長が産業振興、企業・大学誘致に関する市の取り組み、民間事業者の動きのほか、前回会合で出た意見の進ちょく状況を説明した。
 この中で農林水産業分野では、大手水産会社などが試験的に始めたサーモンの海面養殖事業、公益財団法人セーブ・アース・ファンデーション(渡邉美樹代表理事)による森林クレジットの創出計画などを紹介。教育分野では大学誘致に向けて関係者らと随時意見交換しているほか、高田高国際コース(仮称)の令和8年4月設置に向け、関係機関と協議を進めている現状を示した。
 藻谷氏は移住・定住策に関し、「最大の売りは防災。陸前高田は東日本大震災を経験し、対策を講じているため、ほかのまちに比べて自然災害に非常に強い。今、関東地方でも地震がよく起きており、どうなるか分からない中で、『このまちは安全ですよ、ゆったりと暮らせますよ』と、復興祈念公園がある陸前高田が被災地の先頭に立ってアピールしてもいいのではないか」と提案した。
 佐々木氏は、昨年2月の選挙公約で市長が掲げた「4年間で雇用1000人創出」を踏まえ、地方におけるIT・デジタルサービス企業の誘致事例を紹介。「本来、東京、大阪で行う仕事を沖縄で展開し、200人の雇用を確保しているケースもある。デジタルサービスは場所が離れていてもビジネスが可能で、地域的なハンデが比較的小さい。他の成功例を参考に具体的に検討していってほしい」とアドバイスした。
 市は環境省の「脱炭素先行地域」選定を目指しており、これを巡っては末松氏が先行地域が活用できる国からの手厚い財政支援に触れながら、「重要なのは提案した脱炭素先行地域計画の実行性。実際に選定された場合、どのような体制で実施するのか課題を整理し、具体的に準備していく必要がある」と指摘した。
 佐々木市長は「市の復興事業が終わりつつあり、他自治体と競合し、財源を見ながら魅力的なまちづくりを進めるフェーズに入っている。いただいた貴重な意見を踏まえ、今後も各種取り組みを推進していきたい」と総括した。