海上輸送 災害の備えに 釜石港湾事務所と大船渡市など支援協定を締結 地域孤立時の物資・人員輸送見据え(別写真あり)

▲ 協定締結で防災向上を誓う渕上市長(右端)ら

 国土交通省東北地方整備局釜石港湾事務所と大船渡市、久慈市、釜石市は4日、海上輸送による災害支援協定を締結した。豪雨に伴う災害などで孤立集落が発生した場合に、東北地方整備局の港湾業務艇や各市が持つ港湾機能を生かし、救援物資の運搬や人員輸送といった災害支援を円滑に進める体制を目指す。今後は沿岸各地域にある漁港活用も見据えながら連携を強め、防災訓練を重ねるなどして災害対応の強化を図っていく。(佐藤 壮)

 

港湾業務艇からトラックに運び込むまでの流れも確認=釜石港

 締結式は釜石市の釜石港湾事務所で開かれ、小岩利弘同事務所長や遠藤譲一久慈市長、小野共釜石市長、渕上清大船渡市長のほか、3市の港湾、防災担当職員ら約30人が出席。小岩所長と各市長それぞれが署名し、犠牲者ゼロのまちづくりなどを誓った。
 各首長は、過去の台風・豪雨災害での道路寸断や大規模な浸水などについて振り返りながら、防災体制充実の必要性を強調。渕上市長は「大規模災害の備えに万全を期す必要がある。連携を強固にして、防災・減災対策を進める」とあいさつした。
 式後は、釜石港内に移動。普段は宮古港に係留し、大船渡市内などでの災害発生時に活用を想定している港湾業務艇「こはく」(29㌧)を使った実演が披露された。岸壁に接岸後、自治体職員らが物資が入った段ボールをトラック車両に積み込むまでの流れを確認。「こはく」は通常時は12人が乗船できるといい、協定では人員輸送も想定している。
 東北地方整備局では、災害時の陸路分断等を想定して「みなと」の機能を最大限活用できるよう、海上輸送による救助・救援や物資輸送等の災害対応支援を行うため、「命のみなとネットワーク」の形成に向けた取り組みを進めている。
 近年は気候変動の影響で、豪雨による洪水や土砂災害などの気象災害が多発。陸路が寸断して孤立化した被災地では、緊急物資の輸送や救援部隊の派遣、被災者の生活支援、通院の足として海上ルートの活用事例が増えつつある。
 令和3年8月には、青森県での豪雨・大雨を受け、物資輸送や孤立地域の住民輸送が行われた。また、翌年3月の福島県沖地震発生後は、相馬港で市民への給水が行われた。
 協定締結により、今後は物資輸送や被災者輸送などの防災訓練を定期的に実施。関係者の役割分担や、スムーズな体制づくりなどを確認する。
 釜石港湾事務所ではすでに、宮古市と海上輸送体制の支援協力に関する協定を締結。県内重要港湾がある4市すべてと災害時における海上輸送の円滑化が進められることになる。
 大船渡市の大船渡港では茶屋前(大船渡町)、野々田(同)、永浜・山口(赤崎町)に各岸壁機能があるだけでなく、市、県管理を合わせて22漁港あり、県内市町村の中では最多。東日本大震災以降、高台に幹線道路が整備されたが、集中豪雨や土砂災害によって各地域につながる道路が寸断された場合、沿岸部の地域が孤立する不安はぬぐいきれない状況にある。
 市によると、協定締結を生かし、野々田ふ頭を拠点とした物資・人員輸送の充実を見据える。「こはく」が各漁港に接岸しての作業も想定しており、同事務所と市では円滑に行うためのノウハウ共有を図るほか、活動ができる漁港のリスト化などを進める考え。訓練実施も計画する。