震災遺構「適正な維持管理に努める」 市議会一般質問で当局答弁

▲ 震災遺構として保存され、内部も見学できる旧気仙中校舎

 陸前高田市議会定例会は11日、通告に基づく一般質問が行われ、市当局は東日本大震災で被災した経験と教訓を伝承するため保存している震災遺構に関する方針を示した。発災から13年半が経過し、記憶の風化が進む一方で、能登半島地震が発生するなど災害への備えが改めて問われている。当局は「震災遺構の役割はますます重要になる。国や県と連携を図り、適正な維持管理に努めていきたい」としている。
(高橋 信、2面に一般質問の主なやり取り)


 震災遺構の管理・運用を取り上げたのは、大坂俊議員(無所属)。「震災遺構は今後、多額の維持管理費が発生すると思われる。運用・活用の状況によっては指定期間の限定や遺構指定解除を見据えて検討していくべきと思うがどうか」などと尋ねた。
 震災で甚大な被害を受けた同市では、国、県、市が一体となり、県内唯一の国営追悼・祈念施設が入る高田松原津波復興祈念公園を整備。広さは約130㌶で、令和元年9月に一部オープンし、道の駅高田松原、震災津波伝承館が開業・開館した。3年12月に全面開園した。
 広大な園内に点在する震災遺構は、▽奇跡の一本松▽陸前高田ユースホステル▽タピック45(旧道の駅高田松原)▽旧気仙中校舎▽下宿定住促進住宅——の五つ。
 奇跡の一本松とユースホステルには「希望の象徴」、耐力壁が崩壊したタピック45には「津波の威力を伝える」、下宿定住促進住宅には「津波の高さを伝える」、犠牲者を一人も出さなかった旧気仙中校舎には「防災教育の重要性を伝える」との意味合いが込められている。
 県と市は平成30年10月、震災遺構の所有、管理に関する覚書を締結。周辺の除草などは県が、遺構の内部維持管理は市が担うこととし、相互に協力しながら、調査や立ち入り見学に必要な工事、案内看板、立ち入り防止柵の設置などを行っている。
 市観光物産協会は令和3年度から、内部の見学が可能な旧気仙中校舎とタピック45を案内するパークガイド事業を展開。受け入れ実績は3年度が153件6144人、4年度が242件1万8人、5年度が210件7703人。県内外の教育旅行生を中心に利用があり、防災・減災の重要性を伝える施設として活用されている。
 石渡史浩副市長はこうした状況を説明した一方で、遺構指定期間の限定や指定解除などについては言及せず、「可能な限り被災時の姿を見てもらうこととしている。今後も各施設の状況などを踏まえ、震災遺構のあり方について検討していきたい」と答弁した。
 そのうえで、「震災の風化が懸念されるが、能登半島地震が発生したほか、南海トラフ地震、首都直下地震など巨大地震が予測されている中で、祈念公園や震災遺構の役割はますます重要になる。覚書に基づき、国や県と連携を図り、震災遺構周辺の安全対策とともに適正な維持管理に努めていきたい」と述べた。


 

 同日の一般質問には、及川修一議長が登壇。市景観計画、看護体制・支え合い、農業振興への課題を巡り、当局と論戦を交わした。
 議会事務局によると、議長が一般質問を行うのは、昭和30年の市制施行以来初めて。及川議長が一般質問をしている間の議事進行は、鵜浦昌也副議長が行った。