教委「現段階で考えず」 学校給食費無償化巡り一般質問で論戦 財源確保が課題、国主導への要望も

 大船渡市議会6月定例会は11日、初日の一般質問が行われ、市教育委員会は小中学校の学校給食費無償化について「現段階では考えていない」と答弁した。気仙では陸前高田市と住田町で実施しており、大船渡市では生活保護や準要保護を除く保護者に対して物価高騰分の補助があるものの、食材費として1人当たり年間5万円超の徴収を行っている。市教委は恒常的な財源確保を課題に挙げたほか「国で進めるべき施策」とし、働きかけを続ける意向も示した。(佐藤 壮、2面に一般質問の主なやり取り)


 学校給食費無償化を取り上げたのは、トップ登壇の小松則也議員(新政同友会)。県内では気仙の2市町などがすでに実施している現状に触れながら「多くの子育て家庭は生活が困窮している」「やる気さえあれば可能」と語り、実現を求めた。
 小松伸也教育長の答弁によると、全国で小中学生全員を対象に無償化しているのは、約30%に当たる547自治体。県内では33市町村のうち、11市町村が全額無償化を実施している。大船渡市を含む17市町村が一部補助、5市町村は全額保護者負担となっている。
 無償化による保護者の経済的負担軽減や子育て支援、少子化対策、定住・転入促進策に言及。一方で「学校給食法の規定では運営に要する費用のうち、人件費や施設設備費、光熱費は学校設置者の負担で、食材費は保護者の負担としていることから、現時点では考えていない」と答えた。
 伊藤真紀子教育次長は、市内小中学生の給食食材費の負担状況を説明。8月末時点における市内の児童生徒は、小学生1298人、中学生707人の計2005人で、このうち生活保護や準要保護で就学援助を受ける小学生317人、中学生178人の495人分は無償となっている。
 本年度の小学校給食における食材費用は1人当たり5万6160円で、徴収金は5万1000円。中学生は1人当たり6万1200円。徴収額は5万5500円。それぞれの差額は、物価高騰による保護者負担を抑制しようと、市が負担している。
 6年度当初予算の食材費は1億1500万円。このうち、物価高騰支援の市負担は約1100万円で、生活保護・重要保護世帯への給食費支援が約2600万円。残り約7800万円が、保護者負担となっている。
 伊藤次長は答弁で、援助分に対する国庫負担や地方交付税の財政措置が、無償化を実施した場合は対象から外れるとし「当初予算1億1500万円に見合う財源が必要」と発言。恒常的な財源確保の重要性を掲げ「現時点での無償化実施は考えていない」と述べた。
 一方で「無償化は国の施策として実施すべきことと考えており、子育て施策の動向を注視し、実現に向けて働きかける」とも語った。
 再質問で小松議員は、無償化を導入しない理由に学校給食法を挙げた教育長答弁に疑問を呈し、「導入している自治体は法律違反をしているのか」と追及。伊藤次長は「国では自治体による補助を妨げるものではないという見解も示している」と説明した。
 また、無償化の財源として、財政調整基金の活用を提言。花崎誠財政課長は、現状の残高38億円は基準額を上回るとしたものの「給食費のように恒常的なものに使う財源としては、余裕があるとは言いにくい」と難色を示した。
 同議員はさらに、市が今月5日に行った「こどもまんなか応援サポーター宣言」の動きにも触れて、経済的な支援の重要性を強調。渕上清市長は「子育て世代の負担が大きいことは認識している。学童保育利用の負担など、さまざまな課題がある。恒常的に予算を確保するめどが立てばすぐにでも積極的にやりたいが、優先度を見極めながら打つべきところに打っていきたい」と述べた。