津波後出現した水草 間近に 県絶滅危惧Ⅰ類のミズアオイなど 水生植物プールで初の観察会 復興祈念公園内に整備(別写真あり)

▲ 津波を機に現れた水草を保全する水生植物プールで初の観察会を開催

 陸前高田市の県立高田松原津波復興祈念公園管理事務所による自然観察会「希少な水草を観察しよう!」は15日、同公園内の震災遺構・下宿定住促進住宅隣にある水生植物プール(ビオトープ)で開かれた。このプールは、平成23年の東日本大震災による津波が生んだ湿地環境を保全しようと整備されたもので、観察会の開催は初めて。参加者らはプール周辺から、県の絶滅危惧Ⅰ類に指定されているミズアオイやミズオオバコなどを間近にし、改めて震災との関わりを考え、希少な水草を後世に残していく必要性に理解を深めた。(三浦佳恵)

 

プール内で花を咲かせる県絶滅危惧Ⅰ類のミズアオイ

 観察会には、地元を中心に県内各地から13人が参加。講師は、県立大学総合政策学部地域社会・環境コースの島田直明教授(53)が務めた。
 参加者らは、島田教授から水生植物プールができた経緯、生息する水草の説明を受け、観察を行った。
 県内の沿岸各地では、津波で土壌がえぐられ、新たな湿地や池が生まれた。この中には、田畑や住宅地に開発された湿地が、津波で元に戻ったケースもある。島田教授によると、こうした場所では、津波で土壌がかく乱されたために地中で休眠していた水草の種が成長し、姿を現すことがあるという。
 同促進住宅付近の国道45号周辺でも、津波の影響で湿地が出現。平成29年に復興工事で造成を行うこととなったが、自然環境への配慮と、地中にかつて生息していたといわれるミズアオイの種が残っている可能性を踏まえ、湿地の土を仮設プールに移設。令和3年11月には、県が同促進住宅隣に水生植物プールを整備し、土を移した。
 その後、プールでは県の「いわてレッドデータブック」で絶滅危惧Ⅰ類に指定されているミズアオイやミズオオバコ、イトクズモ、サガミトリゲモなど、希少な水草の生息を確認。観察会では、普段は立ち入れない柵の中に入り、プールのそばから水草を眺めた。
 このうち、ミズアオイはミズアオイ科の1年生抽水~湿性植物。ハート型の葉がアオイに似ていることから、ミズアオイと呼ばれるようになったとされる。高さは30~40㌢で、時に1㍍近くまで成長し、7~9月には青紫色の美しい花を咲かせる。
 かつては水田でも見られたが、雑草として駆除の対象に。除草剤の影響で数が激減し、環境省のレッドデータブックでは準絶滅危惧種に指定されている。
 参加者らは、島田教授から特徴などを教わりながら、ミズアオイや、白から薄桃色の小さな花を咲かせるミズオオバコ、サガミトリゲモなどを観察。希少な植物と津波の関わりを理解し、貴重な自然環境を後世に残していく必要性も感じた様子だった。
 島田教授は「津波やこれまであったいろいろなものを乗り越えてきたタフな植物たち。それが絶滅危惧種になっているのは、植物たちが生息できる環境が減っているから。このプールは人の手で残す場であり、絶滅危惧種が生き残るためにも大切な存在」と語った。
 大船渡市大船渡町から参加した尾澤ゆうなさん(大船渡北小6年)は「観察会のチラシなどを見て、絶滅危惧種の花がどうしてこんなところに咲いているんだろうかと思い、参加した。津波で土が掘り起こされて種が出てきたと聞いてびっくりしたし、絶滅危惧種のきれいな花が見られて良かった。勉強になった」と話していた。