祈祷日に個人見学対応へ 猪川町の長谷寺 県文化財予定の「絵馬群」
令和6年9月18日付 1面
県有形文化財(絵画)に指定される見通しとなった「猪川観音長谷寺絵馬群」がある大船渡市猪川町の龍福山・長谷寺(兼務住職・宮城隆照長圓寺住職)では、毎月17日の月例祈祷や年4回の護摩祈祷に合わせ、収蔵庫の個人見学を受け付ける。総代関係者らは〝地域の宝〟の保全・発信に意欲を見せる。
県文化財保護審議会は6日、猪川観音長谷寺絵馬群の指定を答申。審議会後、初の月例祈祷が行われた17日は、宮城兼務住職や地域の総代が集まり、指定の見通しを喜びながら、祈祷に合わせた個人見学への対応を確認した。
宮城兼務住職は「皆さんが守ってきたものに、すばらしいお墨付きが与えられることになった。これからも誇りを持って守っていくという思いを新たにしているのでは」と話していた。
収蔵庫にある絵馬群は全16面で、このうち10面は、江戸時代中期に当たる明和7(1770)年~明治6(1873)年の奉納時期が記されている。残り6面も近世後半~近代に制作された。
絵柄は、皇子を身ごもりながら兵を率いたとの伝説から安産成就で信仰される神宮皇后をはじめ、観月、歌仙図など、定型的な主題ながらも多岐にわたる。描画技法を習得した人物が担い、豊かな色彩に加え、表面が整えられた板材を用いるなど絵画として重要性が認められた。
長谷寺には、大同2(807)年、蝦夷討伐をした征夷大将軍・坂上田村麻呂が気仙郡佐狩郷赤崎小田の首長・金丈丸(赤頭、赤鬼)を滅ぼし、その首を埋めた墓の上に御堂を建て、十一面観世音をまつったとするいわれがある。創建以来、火災や裏山崩落といった災害に見舞われたが、住民らが協力して寺宝を守り続けてきた。
すでに「木造如来座像」と「十一面観音菩薩立像」の2件が、県指定文化財となっており、また一つ、新たに指定が加わる。市内の県文化財指定は、昨年の「盛町五年祭」に続き12件目となる。
今後は、毎月17日の月例祈祷や毎年2、4、7、10月の各28日に行われる護摩祈祷に合わせて、個人による収蔵庫内の文化財見学に対応する。月例祈祷は午前11時、護摩祈祷は同10時に開始。いずれも祈祷終了後、正午前後まで収蔵庫内を見学できる。
事前の申し込みは不要。拝観料として1人300円を求める。希望者は、祈祷にも参加できる。
おおむね5人を超える団体見学は、事前相談にも対応。問い合わせは鈴木敏彦総代長(℡090・9031・9910)へ。