ピーカンナッツ 試験ほ場で「結実」確認 3カ所すべては栽培後初めて

▲ 横田町で生育中のピーカンナッツの実(陸前高田市農林課提供)

 陸前高田市が東日本大震災からの農業再生を見据え、産地化や6次産業化を推進している北米原産のクルミ科落葉樹「ピーカンナッツ」の結実が、市内試験栽培地3カ所で確認されたことが分かった。4年前から先行的に栽培している試験地では一部で過去にも実をつけたが、2年前に植えた最も大規模な高田町のほ場は今回が初めて。いまだ試験栽培のフェーズにあり、米粒程度の大きさの段階で生理落果した実が多かったものの、大学や企業と連携して取り組む長期プロジェクトにおける節目の進ちょくであり、関係者が喜んでいる。(高橋 信)

 

 市は令和2年4月、異なった立地条件を持つ場所で、市の気象条件に適応した品種を探ろうと、横田町と米崎町の2カ所で試験栽培を開始。鹿児島県指宿市から取り寄せた9品種計90本を育てている。
 さらに、4年には栽培地を拡大し、高田町の中心市街地そばの被災低地部約4㌶に、10品種550本の苗木を植樹。「ピーカンのまち陸前高田」を発信していくシンボル的なほ場にも位置づけ、市からの委託を受けた同市のピーカン農業未来研究所(大林孝典代表理事)が経過を観察している。
 市によると、結実はいずれも今年6~7月に確認された。
 高田町のほ場は10本以上の苗木で実が見つかったが、いずれも全長1㌢ほどの時に生理落果した。
 米崎、横田両町のほ場における実は現在、最大で5㌢ほどの大きさで生育中。実は2カ所合わせて5本ほどの苗木でつけているが、数が少量のため、来シーズンに向けた種子などとして活用する方向だ。

高田町で生理落果した実

 ピーカンナッツは米国で大規模に栽培され、抗酸化作用があり、アルツハイマー病予防に有効との研究結果がある。実は柔らかく、渋みがない食べやすさから米国を中心に普及している一方で、国内では消費量が限定的で、外国からの輸入に頼っている。
 市は平成29年7月、収益性の高いピーカンナッツの原料生産から加工商品製造まで一貫した拠点を形成する共同研究契約を、老舗製菓会社㈱サロンドロワイヤル(本社・大阪市、前内眞智子代表取締役社長)、東京大と締結。近年は1年更新で契約期間を延長してきたが、本年度、3者連携の取り組みを腰を据えて展開していこうと、期間を5年延ばし、令和11年3月までとした。
 サロンドロワイヤルはピーカンナッツを使った食文化の普及、国内流通拡大などを担い、4年、高田町の試験ほ場そばのかさ上げ地に、チョコレートやナッツの販売・加工拠点となる「サロンドロワイヤル タカタ本店」を開業。盛岡、仙台の駅ビルにもテナント出店し、ピーカンナッツの認知度向上に努めている。
 一方で、産地化は道半ばだ。ピーカン農業未来研究所は東京大などから指導を受けながら、苗木の接ぎ木実証試験にも取り組んでいるが、苗木の生産・販売のめどはついておらず、今後の事業進展が期待される。農業者らが苗木を植える動きも見られるが、最適品種の選定に至っていない現段階では一部にとどまる。
 佐々木拓市長は「ピーカンが結実したことは試験栽培において大きな前進であり、今後の展望が開けたものと捉えている。結実した要因などを分析し、来年度以降、実の収穫量を大きく増やしていくための取り組みを最優先に進めていきたい」と見据える。