事実と教訓、備えに理解 県立大生による防災イベントも 東日本大震災津波伝承館 多彩に開館5周年記念事業(別写真あり)

▲ 震災津波伝承館が開館5周年を記念し、解説員による展示解説体験などを実施

 陸前高田市の東日本大震災津波伝承館(館長・達増拓也知事)は開館から丸5年を迎えた22日、同館などで開館5周年記念事業を開いた。解説員による展示解説の体験会や、滝沢市の県立大学防災復興支援センター学生団体FROM(フロム)による防災イベントなどが多彩に行われ、世代を超えた来館者らが震災の事実と教訓、災害への備えを学び、より理解を深める機会とした。(三浦佳恵)

 

 同館は、震災津波の事実や教訓、復興支援への感謝などを発信する施設として、高田松原津波復興祈念公園内に県が整備し、令和元年9月22日にオープン。同館によると、開館から先月末までで延べ約107万人が来館している。
 5周年記念事業は、オープンから丸5年の節目に合わせて開催。各地から多くの人々が訪れた。
 このうち、「45分でわかる!展示解説」は通常、事前予約制で行っている解説員による展示解説を気軽に体験してもらおうと、1年ぶりに企画。定員を大きく上回る25人が参加し、金野聡子さん(61)が解説を務めた。
 金野さんは、県内における地震・津波の歴史、震災の被害状況やさまざまな復興支援、災害から命を守るための行動などを分かりやすく説いた。参加者らはうなずきながら解説に聞き入り、学びを深めた。
 宮古市の山口正伸さん(69)は、「伝承館には何度も来ているが、解説を聞いたのは初めて。そうなんだと感心した点が何度もあった」と話していた。
 同公園国営追悼・祈念施設セミナールームでは、本年度設立されたFROMによるイベント「明日からできる防災について考えよう」と、同館のメッセージボードに寄せられた来館者の言葉を紹介する「開館5周年記念展示」を展開。
 このうち、FROMのイベントでは学生17人が対応。非常食や防災グッズの展示をはじめ、新聞紙スリッパ作りや車いす避難、段ボールベッドなどの体験コーナーを設け、来場者らに備えの大切さ、緊急時に役立つ知識などを伝えた。防災クイズも行われ、子どもたちには「キッズ防災士認定証」が贈られた。
 宮城県石巻市から参加した斎藤明花さん(小学5年)は、車いす避難などを体験。「地震や津波のときには、学校では先生の話を聞き、家ではテレビなどの情報を集めて避難するようにしたい。勉強になった」と笑顔を見せた。
 FROMの本田啓人さん(ソフトウェア情報学部4年)は、「伝承館の事業なので、地震・津波に関する防災に焦点を当てて内容を企画した。多くの人が参加し、私たちなりの防災情報を伝えられてうれしい」と語った。
 「開館5周年記念展示」は、10月1日(火)まで実施。同館ゾーン4(道の駅側・地域情報スペース)では、本年度第2回企画展示「命を守る津波避難・避難場所の今─次の災害へ備える取組─」も始まった。期間は12月27日(金)まで。
 早坂寛副館長(69)は「たくさんの人に震災の事実や復興の状況、支援への感謝を伝えられ、5周年を迎えられたのはうれしい。震災から13年がたち、特にも若い世代が震災や支援に対する感謝を自分ごととしてとらえる重要性を伝えていきたい」と誓いを新たにしていた。