今泉に宗像大社の分社 別当・菅野さん宅で遷座祭

▲ 御神体を本殿にまつるため行われた遷座祭

 日本神話に登場する日本最古の神社の一つで、世界文化遺産「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」構成資産である宗像大社(福岡県宗像市)の分社・宗像神社が、陸前高田市気仙町今泉地区に残っている。お宮は老朽化や持続的な管理のため、同町字神崎の別当・菅野貴義さん(56)方の庭に移転され、21日、現地で遷座祭が執り行われた。宗像三女神の一柱である市杵島姫神の分霊を改めてまつり、菅野さんや関係者が「市内唯一の宗像神社を大切に守っていこう」と誓い合った。(高橋 信)

 

菅野さん宅の庭に建てられたお宮

 宗像大社は、日本最古の史書である「古事記」や「日本書紀」の日本神話にも登場する全国でも有数の古社とされる。御祭神は、天皇の祖先神・天照大神の三女神で、沖津宮に田心姫神、中津宮に湍津姫神、辺津宮に市杵島姫神がそれぞれまつられ、この三宮を総称して宗像大社という。
 今泉の郷土史に詳しい済生会陸前高田診療所(所長・伊東紘一医師)によると、気仙町の宗像神社は700~800年前に創建。「陸前高田歴史探訪」「陸前高田市地名考」などの文献によると、「神崎」という地名は同神社がまつられていたことに由来し、宝永期(1704~1711)に神社の社地に泉増寺観音堂が建立されたことに伴い、神社は観音堂のそばに移されたとされる。
 神社は近くに住んでいた菅野家が代々管理。高台にあるお宮は東日本大震災の津波被害を免れたが、近年は管理の負担が増していたことから、昨年秋に本殿を取り壊し、自宅に再建した。その際、まつっていた御神体が時間の経過で朽ちたのか見つからなかったため、菅野さんが今夏、宗像大社に出向き、御祭神の分霊を受けた。
 遷座祭には菅野さんの親類や総代会代表の伊東医師のほか、佐々木拓市長らが出席。斎主は宗像大社からの紹介で、大船渡市三陸町綾里の市杵嶋神社(中島美貴子宮司)が務めた。
 雨の中、仮殿から本殿まで竹明かりに照らされた道を丁寧に清めたあと神様を移し、野菜や菓子などの神饌をささげた。玉串奉てんを行い、海の神様である市杵島姫神に見守ってもらうよう祈願した。
 菅野さんは「市杵嶋神社や伊東先生をはじめ、多くの関係者の尽力で無事に神様をまつることができ、ほっとしている。先祖が大切に守ってきたものであり、これからもほそぼそではあるが、皆さまのご協力をいただきながら維持していきたい」と話した。