DX人材の内部育成を 入庁後2~5年の職員対象に「塾」開設 デジタル活用による業務改革見据え
令和6年9月26日付 1面

全国的にデジタル化の対応が求められる一方で人材不足が顕在化している中、大船渡市は推進を担う市職員の育成に向けた「DX(デジタル・トランスフォーメーション)人材育成塾」を立ち上げた。入庁2~5年以内の職員を対象とし、必要に応じてデジタル活用を実践できる人材としての成長を目指す。12月まで実践策などを学びながら〝縮小社会〟に対応した業務改革につなげる。(佐藤 壮)
25日に市役所で行われた初回の講座には、入庁後2~5年の職員約30人が出席。冒頭、市デジタル戦略課の炭釜秀一課長が「行政変革の推進に向け、市全体のDXの底上げには、内部での育成が肝要。目の前の業務に取り組む中で、気づきから変革に実現できる組織風土づくりにもつながるように期待している」とあいさつした。
講師を務めたのは、ソフトバンク㈱CSR本部北海道・東北地域CSR部参与で、市デジタル推進アドバイザーの磯崎靖彦さん(56)。職員を前に「DXは、アイデアの創出。やわらかい頭で考えなければ、何も生まれない」と語りかけた。
求められる人材として「情報通信機器をたくみに操れる人や、デジタル技術に精通している人ではない。必要箇所でのデジタル技術の活用を提唱でき、業務改革を先導できる人材」と説明。柔軟な対応力や、組織外や異業種の〝巻き込み力〟などの大切さも挙げた。
そのうえで磯崎さんは「アナログ継承とデジタル変革を唱えられる人材」も強調。職員たちは熱心な表情で耳を傾けていた。
人材育成塾は全4回で、12月まで月1回ペースで開催。今後は▽デジタルデータの分析と活用▽イノベーションと問題解決▽DX実践と成果評価──を主な内容とし、説明を受ける講義形式だけでなく受講職員も積極的にアイデアを出す〝双方向型〟を目指す。
市は令和4年度、地域課題解決につながるデジタル技術活用を見据え、若手職員を中心としたデジタル創生研究プロジェクト・チームを設置。「書かない窓口」の検討を進め、今年3月から稼働している市民環境課窓口などの改修につなげた。本年度も、LINEの機能拡充に加え、公共施設予約システムや市ホームページのリニューアルを進める。
人口縮小社会を前提とした行政変革の推進に向け、市役所全体のDXの底上げが必要な半面、デジタル人材は全国的に不足し、事業者・自治体間による奪い合いの様相も呈している。外部人材だけでなく、市役所内部での人材育成も課題とされる。
市はこれまで、部課長や課長補佐・係長向けには総務省地域情報化アドバイザーを招いての説明会を開催。今後は若手職員の研修にも力を入れ、市全体のDX推進を見据える。
市は27日(金)にも、職員研修の一環として「生成AIの活用に向けた体験講座」を予定。同チームの職員が講師役を務め、事務作業軽減に向け、活用が想定される業務を学ぶほか、利用体験などを行う。