「ハイリスク妊産婦」を支援 10月上旬から新たにアクセス支援事業 岩手医大などへの通院・宿泊に5万円まで助成
令和6年9月27日付 1面
大船渡市は、高度医療を必要とする「ハイリスク妊産婦」が安心して受診・出産できる環境づくりに向け、本年度から新たに妊産婦アクセス支援事業を実施する。矢巾町にある岩手医科大学附属病院などへの通院や待機宿泊で生じる費用負担に対し、 1回の分娩当たり5万円を上限に助成。事業開始は10月上旬の予定で、今年4月以降の通院・出産からさかのぼって適用する。(佐藤 壮)
市内に在住する妊産婦の受診・分娩は、基本的に気仙圏域の周産期母子医療センターである県立大船渡病院で多くを受け入れている。一方、母子に重大な予後が予想される「ハイリスク妊産婦」は、同病院などからの紹介をもとに、より高度な医療を提供する岩手医大附属病院への通院や待機宿泊等が必要となる場合がある。
市内在住者はこれまで、移動や滞在に関する費用は自己負担だった。出産前に数週間に1度のペースで通う妊婦もおり、道路凍結が予想される冬場や、診療予約時間によっては医大病院近くで前泊することもある。
新たに導入する事業では、市外の周産期母子医療センターでの妊産婦健診や診察、分娩の際に要した交通費、宿泊費に対して助成。安心して出産できる医療提供体制の整備を見据える。
市内に住所があり、ハイリスク妊産婦であると医師が判断し、市外の周産期母子医療センターに通院の必要がある人が対象。ただし、住所があっても、里帰り分娩などで県外に居住し、県外の医療機関での通院・診療、待機宿泊する場合は助成しない。
交通費は、公共交通機関やタクシー、自家用車のいずれにも助成。対象者が妊産婦健診や診察、分娩時に、周産期母子医療センター近隣の宿泊施設に待機宿泊した際の宿泊費も支援する。タクシーの乗車運賃や宿泊費は領収書をもとに確認するほか、自家用車での往復は、母子手帳に残る受診歴をもとに、自宅からの距離から市旅程規定に基づき算出する。
同センターでの妊婦健診等の開始からが期間となる。1回の分娩当たり5万円が上限で、出産後の健診まで要した費用総額に応じて支給する。
26日の市議会9月定例会最終本会議で可決された令和6年度一般会計補正予算に関連事業費15万円が盛り込まれている。今後準備を進め、10月上旬の事業開始を見据える。
今年4月以降に通院・出産したハイリスク妊産婦から、事業を適用する。市によると、近年は年間百数十件の出産がある中、今年の出産ですでに該当しているケースがあり、本年度は数件の助成が見込まれる。
基本的に申請は、出産後に盛町のサン・リアショッピングセンター内にある市こども家庭センターで受け付ける。センター所属の職員は妊娠時から随時、自宅訪問などを含めて連絡・相談を受ける体制をとっており、スムーズな手続きを目指す。
こうしたアクセス支援には県の補助金措置もあり、産科のない陸前高田市や住田町ではすでに実施している。周産期母子医療センターである県立大船渡病院が位置する大船渡市も支援事業を実施し、地域で安心して出産できる環境づくりにつなげる。
市こども家庭センターの伊勢徳雄所長は「事業費は大きくないが、妊産婦をはじめ出産・子育てに関わる細かい困りごとを丁寧に拾い、支援の充実につなげたい。周産期機能がある当市にも必要な事業」と話す。