身近な〝足〟確保へ出発 末崎地区でデマンド交通実証運行スタート 県交通バス路線廃止に伴う移動支援策(別写真あり)
令和6年10月2日付 7面

大船渡市は1日、末崎地区を中心としたデマンド交通実証実験運行を始めた。岩手県交通㈱運行のバス路線が先月末で終了したことを受け、市街地を結ぶ移動手段として展開する。2人以上の利用は、2割引きを適用するなど、乗り合い促進への工夫も。地区内には同市が誇る観光地の碁石海岸もあり、地域住民のみならず幅広い利用が進むかも注目される。(佐藤 壮)
第1便の運行を前に、末崎地区公民館駐車場では同日、市主催の出発式が開かれた。地区関係者ら約10人が出席。渕上清市長は「将来まで続く交通体系の実現を目指し、末崎地区でもスタートさせる。効果的、効率的なサービス提供を目指す」、新沼眞作同地区公民館長は「利用される皆さんをしっかり支えていただきたい」と述べた。
運行事業を担う一般社団法人県タクシー協会気仙支部の佐藤保支部長(㈲高田交通代表取締役)は「行政との連携を強めながら利活用促進に努める」と意欲を込めた。テープカット後、出席者が見送る中で佐藤支部長が車両を走らせ、事前に予約していた地区内の住民宅に向かった。
初日は自宅から大船渡病院に向かう住民ら計8人が予約。午前は、乗り合いによる割引きが適用された便も見られた。
末崎地区では地域住民の移動手段を担ってきた県交通の「細浦経由高田線(竹駒駅~立根)」が令和4年12月で廃止されたほか、先月末には碁石線の地区内運行が終わった。市は移動需要に見合った交通サービス維持に向け、地域住民らと話し合いを重ねてきた。
デマンド交通の実証事業は、市内では日頃市、三陸町越喜来に続き3地区目となる。実施期間は10月1日~来年3月31日(月)。土・日曜日、祝祭日、年末年始は運休となる。
末崎地区内で乗降する地域住民らに対応し、マイヤ大船渡店や大船渡病院、市役所、盛駅などへの移動を支える。予約に応じて運行する乗合タクシーとして、利用者の自宅から目的地の間を運行する。
事前に登録が必要で、すでに160人超が申請。利用申請書は、市企業立地港湾課か市ホームページから入手できる。同課への電話でも受け付ける。
午前の便を利用する場合は前日午後5時まで、午後の便は当日午前11時までに今後決定する運行事業者に予約する。末崎地区発は1日4便、大船渡・盛地区発は1日3便を運行する。
運賃は就学前児童は無料で、小学生は半額。身体、知的、精神の各障害者や児童福祉法の適用者、通学利用も学割としてそれぞれ半額とする。普通運賃のうち2人以上での乗り合い利用は、2割引きを適用する。
デマンド交通実証により、末崎地区でタクシーチケットは利用できなくなるが、地区内の診療所を受診する際に利便性が向上する地域も。観光客をはじめ地域住民以外の需要も想定される中、スムーズな登録手続きや周知のあり方も利用増に向けた今後のポイントとなる。
問い合わせは同課交通通信係(℡27・3111内線120)へ。運行ダイヤや運賃は別掲。