「稼ぐ」「集まる」に弾み 大船渡地域戦略が気仙初の地域DMO登録認定 三陸沿岸の広域振興見据えた展開も

▲ みちのく潮風トレイルを生かした持続可能なツーリズムの地域定着にも取り組む大船渡地域戦略=7月、三陸町越喜来

 大船渡市の一般社団法人大船渡地域戦略(志田繕隆理事長)が、観光庁から観光地域づくり法人(DMO)に登録認定された。気仙の団体が地域DMOに登録されるのは初。昨年の「候補DMO」になって以降も、積極的な観光振興策を展開してきた。引き続き「稼ぐ仕組みづくり」を見据えた取り組みに加え、「人が集まる街づくり」への支援にも力を入れ、持続可能な観光地としての発展を見据える。(佐藤 壮)

 

 大船渡地域戦略は、令和3年9月に設立。市内事業所を中心とした正会員15社、賛助会員20社で組織している。
 コロナ禍の令和2年に異業種連携を通じたブランディング力向上や地域経済活性化を見据えた「地域ブランディング研究会」が母体。宿泊施設の夕食を市内飲食店で利用する食事券付き宿泊プランや「GoToトラベル」事業のクーポンを活用した旅行商品を企画し、4カ月間で販売額が1500万円を超える効果があったことから、地域の「稼ぐ仕組みづくり」を目指して発足した。 
 DMOは地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに、地域経営の視点に立った観光地域づくりの司令塔としての役割が期待され、全国的に設立の動きが広がる。大船渡地域戦略は昨年9月、候補DMOに認定。10月には、市観光物産協会や市、大船渡商工会議所などによる大船渡観光推進協議会(会長・渕上清市長)も立ち上がった。
 法人発足以降では「恋する旅行。大船渡」と銘打ち、魅力発信や旅行商品を企画するキャンペーンを展開。地域経済の循環を見据えたポイントアプリ「大船渡さんぽ」は今年3月末で会員数約2500人、加盟店は80店舗を超える。
 本年度は観光庁の事業採択を受け、地域の観光振興につながる資源を引き出す取り組みにも力を入れている。海外ハイカーの関心も集めるみちのく潮風トレイルを生かした受け入れ体制整備を進めているほか、三陸沿岸の冬季集客に向け、高級食材であるアワビやナマコ、フカヒレを生かした活動も始まった。
 今後も▽都市部からのビジネス出張を含む「ひとり旅行者」▽40代以上の都市圏に住む「旅好き少数グループ」▽台湾、東南アジアからの個人旅行客▽米国・欧州・豪州からのハイカー客──を主なターゲットとする。旅行者のニーズに沿った資源強化や観光体験・滞在コンテンツの強化にも力を入れる。
 「大船渡さんぽ」はポイント付与による経済活性化だけでなく、旅行者らの行動・消費データが把握できる特性もあり、今後のさらなる広域的な利用を見据える。隣接する市町と連携しながら「三陸旅行のコンシェルジュ」としての情報発信にも力を入れる。
 また、現状の固定的な自主財源は構成会員の年会費や「大船渡さんぽ」の手数料が中心となっているが、新たな財源確保に向けて市などと協議を継続的に進める。
 DMO登録を受け、志田理事長は「うれしさと、これからも頑張ろうという思い。現状は三陸沿岸それぞれで集客・PRもしているが、三陸全体で連携していく活動を強化したい」と語る。
 渕上市長は「候補DMOとなって以降に実施してきた取り組みが評価されたものと考えている。観光振興を担う中核として一層の発展を期待する」としている。