りくカフェが本設10周年 これからも〝まちのリビング〟 「健康フェス」で住民元気に(別写真あり)

▲ 「減塩でもこんなにおいしい」──そんなランチを提供することで陸前高田市民らの健康意識を高めてきたりくカフェがオープン10周年を迎えた

 陸前高田市のNPO法人りくカフェ(鵜浦章理事長)が運営する高田町鳴石のコミュニティーカフェ・りくカフェで6日、本設施設オープン10周年を記念し「健康フェス」が開かれた。東日本大震災以降、被災した同市における貴重な「居場所」、内外の人々の「交流の場」として確かな存在感を示してきた同カフェは、この10年間で健康と生きがいづくりの場としても進化。スタッフらは同日もさまざまなサービスを通して、元気でいることの喜びと大切さを来場者に伝えた。(鈴木英里)

 

 この日は、りくカフェに隣接する鵜浦医院、森の前薬局、震災翌年から2年近く運用されてきた旧施設「もとカフェ」など一帯の施設を会場とし、筋肉量や骨密度、野菜摂取量などを測定できるコーナーを設置。管理栄養士や薬剤師が相談に応じたほか、無料のマッサージも人気を博した。
 カフェ内では一関市千厩町のレストラン「あさひや」と、りくカフェの総菜、地元のパン店のパンを盛り合わせたランチプレートを特価の500円で提供。ランチ提供開始時刻の午前11時前から長蛇の列がつくられ、プレートを受け取った人たちは減塩ながらうま味たっぷりに味付けされた昼食を、朗らかなおしゃべりとともに楽しんだ。
 また、慶応大学のアカペラサークル・デモクラッツや、同サークル出身者らで構成される有志グループ・りくラッツのOB・OGらも駆けつけ、オープニングと昼食時間の2回にわたりそのハーモニーを披露。広く知られるポピュラーソングで会場を盛り上げた。
 学生時代からデモクラッツの一員として同市をたびたび訪れ、震災後も定期・不定期でOBらとともに現地へ歌を届けてきた静岡県沼津市の会社員・鈴木健史さん(38)は、「歌を聞きに来てくださる人同士がつながり、コミュニティーが生まれていく〝場〟がある重要性は、震災が起きる前から実感していた。あの災害後に地域の方たちの手でそういう場がつくられたことは本当に意義深かったし、僕たちのような外の者と地元の方をつないでくれる、本当に特別な場所」と語り、人々の集う拠点が守り続けられていることを祝福した。
 りくカフェは、震災で「ほっと一息つける場所がなくなってしまった」という市民の声を受けた鵜浦理事長(74)=鵜浦医院院長=と地域住民、大学や企業との連携により平成24年1月に開設。▽誰もが楽しく集える場▽市内外を結ぶ懸け橋の場▽健康と生きがいづくりの場──がモットーの〝まちのリビング〟として愛され、26年には新施設で本格的にカフェ営業を始めた。
 本設オープン後は、地元の女性たちが減塩の工夫を凝らしたランチを振る舞うほか、地元の高校生が考案したメニューを提供することも。旧施設「もとカフェ」もそのまま残され、住民の介護予防や健康寿命を延ばすための取り組みなどに活用されている。
 鵜浦理事長は「設立に関わってくださった方々の『陸前高田を元気にしたい』という熱い思いに応えるべく、健康づくりを核としてきた。脳卒中死亡率が過去に全国ワーストになったこともある岩手県だが、ランチ提供を通じた減塩の取り組みは成果も見え始めている。『これならできそう』というモデルをりくカフェから示すことで、これからも地域の皆さんの元気を守っていきたい」と話していた。