〝集大成〟の味かみしめ 最後のワカメ調理実習 末崎中3年生 協力への感謝込め腕振るう(別写真あり)
令和6年10月9日付 7面
大船渡市立末崎中学校(佐々木伸一校長、生徒71人)の3年生26人は8日、ワカメ養殖学習のまとめとなる調理実習を行った。統合に伴う閉校を控え、本年度が最後の学習。生徒らは、学習に協力してくれた関係者への感謝を込めながら腕を振るい、〝集大成〟の末崎産ワカメの味をかみしめた。
同校では毎年度、生徒らが約2年をかけてワカメ養殖を体験。1年時に種糸巻き付けと早刈り、本刈り作業を、2年時に芯抜き、パック詰めを行い、接客講習会を経て、盛岡市の2カ所で販売会を開いている。地元で盛んな産業を学びながら、郷土への愛着を深める機会にも位置づけて実施している。
調理実習は、学習のまとめとして、平成29年度から実施。県生活衛生営業指導センター(菊池幸郎理事長)と県飲食業生活衛生同業組合大船渡支部(千葉武継支部長)が、後継者育成活動の一環として指導にあたっている。
この日は、同支部の組合員12人が来校し「末中ワカメ」を使ったチヂミとナムルの2品の調理を指導。学習のスーパーバイザーを務める地元の尾﨑眞さん(63)をはじめ、携わった市漁協末崎地区女性部のメンバーも訪れ、実習に臨む生徒らの様子を見守った。
組合員の中には、同校の卒業生も5人おり、母校の後輩たちと和やかな雰囲気で調理を進めた。
チヂミにはワカメの中芯、ナムルには葉の部分を使用。生徒らは自分たちの手で育て、収穫、加工したワカメを丁寧にさばき、1年生から続けた養殖学習の思い出をかみしめるように手を動かし、チヂミをひっくり返す工程が成功すると、拍手と歓声が広がった。
作った料理は同日、全校生徒と教職員、来校者に提供。生徒らは、ワカメ学習の集大成の味に舌鼓を打ち、笑顔で頬張った。
熊谷勇飛さんは「これでワカメ学習が終わってしまうことに悲しさもあったけど、みんなで協力して調理できて良かった。地元で行われているワカメ養殖の工程と、漁業者の苦労を知ることができ、貴重な機会になった」と振り返った。
同校卒業生で、指導にあたった同支部の志田繕隆副支部長(56)は「『大船渡には何もない』と、中学校卒業後に都会に出て、東日本大震災を機に戻ってきた身だが、大船渡の自然や海の良さに気づき、ものの見方や考え方が変わった。母校が閉校してしまうことは寂しいが、生徒たちには『末崎にはワカメがある』と誇りを持って、新しい環境でも生活していってほしい」と成長を願っていた。