「夢や力与える選手に」 琢磨会の中嶋翔吾さん キックボクシングでプロデビュー
令和6年10月11日付 6面

大船渡市の実戦空手道・琢磨会(中嶋隆一会長)の代表を務める中嶋翔吾さん(36)=同市立根町=がこのほど、キックボクシングのプロライセンスを取得した。先月に東京都新宿区で行われたジム対抗戦のウェルター級でデビューし、白星を挙げて夢だったプロキックボクサーとしての第一歩を踏み出した。空手道で培った技術と経験を生かし、「夢を追い続ける姿を見せ、多くの人に夢や力を与えられる選手になりたい」と語り、トレーニングに汗を流す。(菅野弘大)
幼い頃から空手道に取り組んでいた中嶋さん。「空手からキックボクシングのプロ選手に」という夢を追いかけ上京し、努力を続けていたが、けがを理由に東京での活動を諦め、23歳で帰郷。地元の琢磨会で再び空手に打ち込み、東北を代表する選手に登り詰めた。
空手を続けるかたわらで、アマチュアのキックボクシングも始め、盛岡市のHOSOKAWAジムに所属し経験を積んだ。「プロを目指すなら年齢的にも今しかない」と挑戦を決め、プロランカーとの試合を経てジムから推薦をもらい、今年8月にライセンスが交付された。
9月のデビュー戦に向けては、1カ月で9㌔の減量に成功。「これが一番きつかった。家族をはじめ、さまざまな人の支えを受けて、一人では何もできないことを実感した」と感謝の思いを口にした。
ウェルター級で臨んだデビュー戦は、元ボクサーでパンチを得意とする選手と対戦。中嶋さんは、相手のパンチをもらわないように距離を取りながら、空手仕込みの蹴りを上、下半身に蹴り分け、それを警戒した相手の隙を突いてパンチを的確に打ち込んだ。「作戦通りの試合運びができた」とKO勝ちを収め、「楽しかった。これまでとは違う達成感を味わえた」とプロとして立った初の舞台をかみしめた。
東京で夢に破れ、地元から再びプロ選手を目指した。空手などで生まれたつながりから、実力のある練習相手にも恵まれ、約10年越しに夢をかなえた中嶋さん。12月の新人王決定戦への出場が見込まれ、いずれは、名だたる有名選手らが出場する立ち技打撃格闘技イベント「RISE(ライズ)」にも「出場したい」と次なる目標を見据える。
「自分から空手を取ったら何も残らない。年齢や能力ではなく、打たれ強さや前に出るといった〝戦う気持ち〟が大切だと思う。空手に恩返しをする意味も込めて、プロとしての戦う姿勢や、夢を追い続ける姿を下の世代に伝え、夢や力を与えられる選手になりたい」と思いを込める。