企業と豊かな森づくりへ 市が独自制度新設 市有林生かし活動の場提供(別写真あり)

▲ 市有林で現状の説明などを受ける視察参加者

 陸前高田市は、豊かな森を次世代に残そうと、全国の民間企業・団体とタッグを組み、森づくり活動を促進する独自の制度を新設した。趣旨に賛同する企業・団体と3年間有効の協定を結び、市は社員研修やレクリエーション活動の場などとして市有林を提供し、参加企業は各種活動を通じて森を育む意義を学ぶ仕組み。市側には協定に基づき、参加企業から協賛金が支払われ、市全域の林業振興施策に生かすこととしている。(高橋 信)

 

「企業等による森づくり制度」は、市が昨年11月に公益財団法人SaveEarthFoundation(セーブ・アース・ファンデーション、渡邉美樹代表理事)などと結んだ「森林資源の活用に関する連携協定」に基づき、今年9月に定めた。
 森林が有する多面的機能の維持・増進、交流人口拡大、地域活性化などを目的とし、同法人、市森林組合(菅野賀一組合長)が運営をサポートする。
 参加企業は活動計画を提出後、市と協定を結んだうえで活動に入る流れ。協定期間は3年間(更新可)で、企業は少なくとも年1回森づくり活動を実施する必要がある。
 対象地は高田町内の市有林約20㌶。比較的車で行き来しやすく、眼下に広がる海を眺望できるロケーションが売りのエリアとして選定した。植えつけてからの年月が浅い木が集中しているため、現地での活動を通じて木々の成長の過程を体感できる。
 提供数は現段階で20区画程度を用意している。今後、相談・申し込みを受け付けていくが、手続きに半年間ほどを要するため、現場での活動本格化は来年からを見込む。
 協賛金は年間50万円。市は再造林や下刈り、間伐など市全域の森林機能維持管理費に充てる。
 16、17日は制度運用のキックオフとも位置づけ、セーブ・アース・ファンデーションによる視察があった。法人関係者と会員企業6社の担当者ら計15人が参加し、制度の説明を受けたり、山林で枝打ちを体験したりした。
 ㈱ローソンSDGs推進室の石塚隆史マネジャー(38)は「同様の取り組みは全国的に展開されているが、これほど自治体が手厚くサポートするのはまれ。森林保全などを学ぶフィールドとしての価値を感じ取ることができた」と話した。
 市は同制度とは別に、年度内に市有林の二酸化炭素吸収枠を販売する「J─クレジット」の創出・販売を計画している。
 市農林課林政係の蒲生夏生係長は「当市の場合、山だけでなく、川や海も有しており、参加企業にとっては、『豊かな森が豊かな海を育む』という自然のつながりを森林活動、海を見下ろせるロケーションを通じて肌で感じられる。企業関係者が継続的に当市に足を運んでもらうことにもつながり、制度を運用することで林業振興だけでなく、地域活性化も図っていきたい」と意気込む。