孤立地域物資輸送も実施へ 11月17日に大津波想定の防災訓練 能登半島地震など踏まえ支援協定活用

▲ 訓練では港湾業務艇からトラックに運び込むまでの流れも確認(協定締結時に行われたデモンストレーションの様子)=釜石港

 大船渡市による防災訓練は、11月17日(日)午前7時30分~9時に、市内全域で行われる。平成23年の東日本大震災や、令和4年3月に県が公表した最大クラスの地震津波と同程度の災害を想定。今回初めて、孤立地域の発生を想定した物資輸送等訓練も実施する。今年1月の能登半島地震で集落の孤立が多発・長期化した教訓や、9月に国土交通省釜石港湾事務所と締結した協定を生かす。(佐藤 壮)

 

 訓練は、大船渡市と大船渡地区消防組合が主催。災害発生時に命を守る住民自身の行動をはじめ、行政等の初動体制、防災関係機関との連携などを確認しながら、津波発生時の安全・迅速な避難体制と、防災関係機関相互の連携・協力体制の確立を図るのが狙い。地震・津波を想定した訓練は昨年に続く実施となる。
 今回は「17日午前7時30分頃に、かなり強い地震が発生し、岩手県沿岸に大津波警報が発表され、市は避難指示を発令。市内各地において家屋の損壊、停電、断水等の被害が確認され地震による建物火災も発生し、延焼拡大の恐れがある」との想定で、避難や身を守る活動を促す。
 行政や交通、医療、福祉、産業など各分野の45団体が参加を予定し、住民らの参加人員は、約5000人を見込む。住民や消防団員らによる確実な避難や安全確保に加え、災害対策本部の運営、情報伝達手段の確保、消火栓以外の水利を利用した火災防御などを確認する。
 市内各地域の自主防災組織単位では、最大クラスの津波浸水区域を想定した訓練や、避難行動要支援者名簿の活用による避難支援、避難所運営マニュアルの活用による避難所開設訓練などが行われる。
 今回新規で実施する孤立地域の発生を想定した物資輸送等訓練は、市と釜石港湾事務所が先月4日に締結した海上輸送による災害支援協定に基づくもの。東北地方整備局の港湾業務艇や市が持つ港湾機能を生かし、救援物資運搬や人員輸送を円滑に進める体制を目指している。
 近年は気候変動の影響で、豪雨による洪水や土砂災害などの気象災害が多発。陸路が寸断して孤立化した被災地では、被災者の生活支援、通院の足として海上ルートの活用事例が増えつつある。
 令和3年8月には、青森県での豪雨・大雨を受け、物資輸送や孤立地域の住民輸送が行われた。また、翌年3月の福島県沖地震発生後は、相馬港で市民への給水が行われた。
 大船渡港には茶屋前(大船渡町)、野々田(同)、永浜・山口(赤崎町)に各岸壁機能があるだけでなく、市、県管理を合わせて22漁港あり、県内市町村の中では最多。災害時に道路が寸断された場合、沿岸部の地域が孤立する不安がぬぐいきれない状況にある中、海上輸送の確立も目指す。
 現段階で市では、野々田埠頭を拠点とした物資・人員輸送の充実を見据える。訓練では、実際に岸壁に港湾業務艇を接岸させ、孤立地域に向かうまでの流れを確認する。
 市防災管理室の伊藤晴喜次長は「最大クラスの津波で道路が浸水した場合、地元建設業者などによる応急的な作業が行われるまでの間、孤立化する地域が複数考えられる。港湾事務所との連絡体制確立や、物資輸送の手順を確認したい」と話す。
 訓練に関する問い合わせは市防災管理室(℡27・3111)へ。