アワビ切り口に活性化を 大船渡商議所と民間3事業者中心に取り組み展開 歴史・文化調査集約や料理開発も

▲ 干鮑など地元事業所の技術を生かした地域活性化を目指す(資料)

今後の取り組みを確認した「キックオフ会議」

 大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)は本年度、復興庁の「新ハンズオン支援事業」を活用し、大船渡市内で漁獲、加工されるア

ワビに着目した地域活性化事業に取り組む。国内外で高く評価される干鮑や養殖といった民間企業の技術などを地域資源としてとらえながら、歴史的・文化的な調査や料理開発、地元高校生との連携などを通じて「鮑=大船渡」のブランド確立や料理の特産品化、住民や観光客の認知度向上などを目指す。(佐藤 壮)


 復興庁の同支援事業は、民間企業等からの出向職員(政策調査官)の知見を活用し、各種の専門家とともに被災地域企業の経営課題を解決する取り組み。大船渡商議所はグループ支援として選定を受けた。
 東日本大震災を受け、同商議所は平成24年度から「失われた販路の回復、新たな販路の拡大」を目的とした支援事業を展開。今回は、アワビ関連事業を主力とする市内の㈲田村畜養場三陸営業所、元正榮北日本水産㈱、野村海産㈱の各技術力を地域資源として効果的に活用しながら、産業の活性化や交流人口拡大を目指す。
 田村畜養場では「吉品干鮑」の加工品で知られ、海外に輸出しているほか、活アワビの畜養や国内流通も事業としている。元正榮北日本水産は、国内最大級の陸上施設で養殖アワビを生産し、缶詰や燻製の加工品も手がける。野村海産も干鮑生産の技術に加

え、肝部分の有効利用にも力を入れている。

 活動本格化に向けた「キックオフ会議」が18日に同商議所で開かれ、商議所や民間3事業者、復興庁に加え、行政、教育、飲食業、印刷・出版の関係者ら約20人が出席。同商議所の小原勝午事務局長は「9月に採択を受け、一堂に会する場は初めて。今後の展開に向けて情報を共有していきたい」とあいさつした。
 協議では「『鮑=大船渡』というブランディング確立」「鮑料理が大船渡の特産品として市民、観光客に認知されていく」の方向性を確認。来年1月までの間に▽歴史的・文化的な関わりの集約と背景の明確化▽冊子の作成▽市民、観光客向けの鮑料理に関するチラシ作成▽新しい食べ方提案▽海鮮産直まつり出店▽大船渡東高校との鮑料理開発▽飲食店組合と連携した料理講習会など普及・啓蒙活動──を進める。
 アワビは高級食材として広く知られるが、近年は海洋環境変化や、東京電力福島第一原発の処理水海洋放出に伴う中国の禁輸措置などで不安定な収量、取引価格が続く。協議では「生アワビと干アワビで成分の違いはどうか」「殻ももっと有効活用できれば」といった声も寄せられた。
 会議に出席した野村海産の野村誠一代表取締役は「アワビの消費拡大につながれば」、田村畜養場三陸営業所の三ツ井裕所長は「国内消費が増えるためにも、市内から盛り上がってほしい」、元正榮北日本水産の古川翔太取締役営業部長は「安定的にアワビ製品を供給していくためにも、地元でしっかり浸透を」とそれぞれ話し、今後の事業に期待を込めた。