雨もなんの地域に活気 末崎町中森の熊野神社 式年大祭の演舞や行列復活(別写真あり)

▲ 8年ぶりに行われた練り歩きで地域に活気が満ちた

 大船渡市末崎町字中森に鎮座する熊野神社(志田隆人宮司)の式年大祭は19日、同神社境内などで挙行された。海が荒れた影響で御神体の海上渡御中止を余儀なくされたものの、コロナ禍以前の各祭組による郷土芸能奉納や泊里漁港までの練り歩きが8年ぶりに復活。にぎやかなおはやしが響き渡り、地域に活気を呼び込んだ。(栗村勇翼)

 

 この日、境内には各地域に伝わる虎舞の頭が集結。▽碁石▽山根▽三十刈▽西舘▽門中▽小河原▽梅神――の各地区が虎舞や七福神、手踊りなどを奉納した。
 神事には、総代ら約30人が参列。志田宮司による祝詞奏上や参列者の玉串奉てんなどで、地域の平穏を祈願した。
 このあと、同神社から泊里漁港までの道のりを行列が練り歩き、沿道の地域住民と笑顔を交わした。
 本来は、同神社が約800年前に鎮座した由来とされる「麻腐(おくされ)島」を目指しての海上渡御が行われるが、前夜からの降雨もあり、波の状態が不安定とし、安全を考慮して取りやめ。曳き船の中止は今回が初となった。
 こうした中、各祭組は同漁港で力強い演舞を披露し、練習の成果を発揮。大人から子どもまで、多くの世代が躍動し、会場では拍手喝采が飛び交った。
 このうち、県指定無形文化財にも指定されている門中組虎舞は、前々回よりも頭の数を1頭減らし、2頭で演舞。人手不足の影響を感じさせない迫力と、貫禄のある舞で観客を沸かせた。
 顧問を務める新沼利雄さん(73)は「頭の数が減ったことによる影響は大きいが、引き続き参加がかなったことがうれしい。高齢化や担い手不足は、当組だけの問題ではない。今後も、地域全体で後継者発掘・育成に力を入れていく必要があると感じた」と話した。
 志田宮司(57)は「海上渡御の中止は初めてのことで、とても残念。しかし、郷土芸能の披露や行列の練り歩きなどを再び行うことができて、にぎやかな祭りになったので良かった」と話していた。
 同神社の式年大祭は、五穀豊穣や大漁祈願、交通・海上安全などを願う4年に1度の祭り。
 町内は東日本大震災による甚大な被害に遭いながらも、発災翌年の平成24年や28年も実施。前回は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、催行年であった令和2年の開催を延期し、同3年に郷土芸能奉納や行列を見送る規模縮小の形で行っていた。