災害救助の腕前競い合う ロープレスキュー全国大会が開幕 大船渡の市街地では初開催 きょうまで(別写真あり)
令和6年10月20日付 7面

安全な災害救助の技術を競い合う「ロープレスキュー競技全国大会in大船渡市」(同実行委主催)は19日、大船渡町のキャッセン大船渡周辺で開幕した。20日までの2日間、県内を中心とする全国各地のレスキューチームが、幅広い災害想定の中で人命救助に挑んでいる。初日は「都市災害」に対する救助をテーマに、高層建物や川、防潮堤などの場所で救助活動が繰り広げられ、東日本大震災からの復興を遂げた市街地で、消防士たちが訓練の成果を発揮した。(菅野弘大)
ロープレスキューは、崖下に転落した人や高いビルに取り残された人をロープと救助資機材を使用して安全に救助する技術。全国大会は、現場までの到達が困難な場所などにおいて、いかに安全で迅速に要救助者を救出できるかを競い、学び合おうとの趣旨で開かれており、コロナ禍による休止を経て11回目の実施となった。
大会運営の実動部隊となる実行委(村上浩朗代表)は、大船渡地区消防組合職員ら40人以上で構成。震災前から職員有志がロープレスキューを学び、同市では末崎町の碁石海岸を舞台に全国大会を開催してきた実績がある。今回は「復興事業で整備された市街地での大会開催を」という大船渡地区消防組合勤務の吉田元気さん(29)の構想を盛り込み、関係各所の協力も得て、2日間でキャッセン周辺と碁石海岸での開催が実現。市街地での実施により、市民にも取り組みを見てもらうとともに、震災復興への支援に対する感謝と絆の発信機会にも位置づけた。
19日は、キャッセン周辺で都市災害に対する救助を行う「アーバンステージ」、20日は碁石海岸で自然地形に対する救助を行う「ネイチャーステージ」を設定。大会には岩手、秋田、北海道、栃木・福島、群馬、愛知、京都の10チーム90人が参加し、70人のスタッフ、ボランティアが運営やサポートにあたっている。
初日の開会式では、吉田さんが高らかに開幕を宣言。OFUNATO RESCUE TEAMリーダーの鎌田晃輔さん(31)=三陸分署勤務=は「開催地代表としての出場なので、市街地開催での初代王者を狙いたい」と意気込みを語った。
装備を整えた各チームは、キャッセン周辺に設けられた6カ所の想定場所で、1チーム8人で救助に臨んだ。要救助者の想定は▽おおふなぽーとから大船渡プラザホテルへの移送▽おおふなぽーと屋上への移送▽須崎川に架かる橋の間の移送▽みなと公園の防潮堤を越えての救助▽サン・アンドレス公園の展望台における救助▽キャッセンから加茂神社への徒手搬送──の六つで、それぞれ制限時間内での救助完了を目指した。
おおふなぽーとの展望デッキと大船渡プラザホテル屋上における救助では、両施設にわたされたロープをつたって要救助者のもとに向かった。競技者は、これまで培ってきた技術と装備を駆使して時間いっぱいロープを握り、チームワーク良く競技に力を注いだ。
また、一般の市民らも足を止めて、競技の様子を見守った。運営にあたった吉田さんは「市や消防組合の協力のもと、市民の方々に見てもらえる環境で開催できたことを幸せに思う。安心、安全なレスキューの様子を多くの方に伝えられる大会になったのではないか」と充実感をにじませていた。
20日は碁石海岸の穴通磯周辺を会場に競技が行われ、一般見学も可能。競技開始は午前9時で、終了は午後5時の予定。