平時から備えの意識を 町が総合防災訓練 個別避難計画もとに実施(別写真あり)

▲ 要支援者を介助しながら避難所へと移送した

 住田町は20日、町内全域で総合防災訓練を行った。今回は初めて、個別避難計画をもとにした訓練も実施。豪雨を想定し、1人では避難が困難な要支援者への対応を確認したほか、消防団と連携しながらの移送介助も行った。近年、全国各地で自然災害が発生し、その被害も甚大化する中、関係機関の相互連携強化と避難・公助意識の高揚を図った。(清水辰彦)

 

 訓練は、災害対策基本法や町地域防災計画に基づいて防災機関、地域住民の協力によって行うことで、有事の際の迅速かつ円滑な応急対策につなげようと実施。今回は、土砂災害警戒情報と河川の氾濫危険情報発表を受けて「避難指示」を発令するとの想定のもと、個別避難計画に基づく避難、全町民を対象とした避難、災害対策本部設置訓練を展開した。
 同町では2年に1回防災訓練を行っており、令和4年は県と気仙3市町合同での総合防災訓練として行われた。同年の訓練では、災害時に自力で避難するのが難しい「避難行動要支援者」への対応が課題として浮かび上がった。
 これを受けて、今年は「個別避難計画に基づいた訓練」を重要視し、「地域住民同士の助け合いによる避難」をテーマとして掲げた。
 同計画は、高齢者や障害者等の避難行動要支援者一人一人の状況に合わせて、災害時にどのような避難行動をとるのか、「誰と」「どこへ」「どのように」避難するのかや、避難時や避難先での必要な配慮などについてあらかじめ定めておくもの。町では本年度、ケアマネージャー、地域包括支援センター、町保健福祉課が担当となって策定を進めている。
 この日の訓練には消防団員125人と一般町民932人が参加。午前7時30分、町内全域で土砂災害、浸水被害の恐れがあるとして、「高齢者等避難」、同7時45分には土砂災害警戒情報、河川の氾濫警戒情報発表に伴う「避難指示」が発令され、住民らは各地域でそれぞれ避難行動を開始した。
 事前に個別避難計画作成者の情報に基づいて避難役も設定しており、訓練ではケアマネージャーが要支援者に対して電話で避難準備を指示し、避難先を確認。民生委員は要支援者の安否を確認し、個別避難計画対象者を巡回するとともに、要支援者の状況を自主防災組織へと伝えた。
 自主防災組織は避難所を開設し、消防団を通じて災害対策本部に状況を報告。消防団は警戒巡視を行いながら避難所を巡回し、介助が必要な避難者を、指定避難所となる住田中体育館、大股地区公民館、生涯スポーツセンター、上有住地区公民館、五葉集会センターへと、それぞれ移送した。
 このうち、メイン会場となった住田中体育館では、備蓄している非常用トイレや食料などの展示、試食も行われ、避難者用のプライベートルームも設置した。
 個別避難計画に基づく参加者は本人と避難役合わせて23人で、うち12人が住田中に避難。消防車両などで移送され、介助を受けながら避難所入りした。各関係機関が連絡を取り合いながら、有事の際のスムーズな避難につなげようと訓練に臨んでいた。
 町総務課の堀尾昌史課長補佐は「実際に災害が起きた時は、さまざまな状況が想定されるので、柔軟な対応が必要となる。平時から避難時の心構えなどを確認して備えてほしい」と話し、「個人だけでなく、地域としてどう対応するのかも事前に話し合ってもらえれば」と備えの大切さを呼びかける。
 今年1月に能登半島地震が発生したこともあり、日頃からの備えの重要性が叫ばれている。町では2年に1度だった防災訓練を来年度も実施する考え。