有志らが植生など調査 保全に向けた活動少しずつ 珊琥島の活用目指し(別写真あり)

▲ 大船渡湾に浮かぶ珊琥島の島内。マツ枯れ被害は著しいものの、多くの魅力と価値が残されている

長年放置された国の名勝

 

 昭和18年に国の名勝に指定され、東日本大震災前までは市民が定期的に整備・活用していた大船渡市の珊琥島。以前のように人が出入りできる環境を取り戻したいと願う有志らが22日、マツ枯れや植物相の調査のため渡島した。島内の歩道は失われ、倒木などの被害ですっかり荒れ果ててはいるものの、観光・教育資源としての価値が保たれていることが確認され、関係者らは今後、市民に協力を呼びかけながら珊琥島の再生活動について認知を広げていく考えだ。(鈴木英里)

 

 この日は、珊琥島保全に関する発起人で、東京世田谷ロータリークラブ会員の山田康生さん(61)=三面椿舎代表=をはじめ、昨年度「珊琥島再生プロジェクト」を立ち上げた大船渡ロータリークラブ(伊藤博会長)のメンバー、林業と植物学の専門家、大船渡市職員ら計7人が渡島。約3時間かけて、マツ枯れの状況と自生する植物の調査にあたった。
 山田さんらによる調査は、令和4年6月以来2回目。同島では平成27年ごろからマツノセンザイチュウを原因とするマツ枯れ被害が見られ始め、現在は骨のように白化した木々が目立つ。今回は2年前より立ち枯れが進行していることが明らかとなり、マツが他の木を巻き込んで一緒に倒れ、進路をふさいでいる状況なども見られた。
 ただ、一部の開けた場所から見える湾内の景観は見事で、参加者もその美しさに歓声。カモシカの生息も目の当たりにした。また、県立博物館の鈴木まほろ学芸員(51)が、今回だけで約120種類の植物を確認。生育するのは気仙地方の山裾で一般的に見られる草花や樹木だったが、人の手で植えたとみられる木や、「いわてレッドデータブック」に掲載される絶滅危惧種も1種類見つかった。
 鈴木学芸員は「4月下旬から5月上旬ごろにもう一度調査すれば、島にどういう植物があるかリストにできる。それに基づき、保全すべき品種などについての情報を提示したい」と語った。
 特殊伐採などを手がける大船渡市の㈱徳風代表取締役・蕨野充徳さん(50)は、枯れたマツについて「切ること自体はそう難しくない。ただ、現在の島の状況では重機などを上げられないため、切った後の処理をどうするかが問題」という。
 島には船着き場が残るだけで、入り口にあったとされるスロープは崩れて失われ、ロープを使って斜面をよじ登ることでしか島に入れない。このことから一行は、階段の設置や作業道・遊歩道の整備、下草刈り、間伐などを見据える。
 一方、同島は国立・国定公園第1種指定地域に分類されるため、工作物の設置や土地の形状変更、木竹の伐採にはすべて申請が必要で、認可を受けない限り手を入れられない。
 蕨野さんは「市の観光資源として守っていくためにも、道の整備などやるべきことは多い。どこまでならやらせてもらえるのか調整を急ぎたい」とし、市商工港湾部観光交流推進室の紀室繁喜係長(51)は「環境省自然環境局大船渡自然保護官事務所にどんなことをしたいか相談していただき、現地調査にも同行してもらうなどしながら、やれることを見極めてもらえたら。市でも助力する」と述べた。
 同島は大正13年に結成された大船渡村・赤崎村公園組合によって「珊琥島協同園」となり、いこいの場として両村の住民が守ってきた。名勝指定後は、地域住民が定期的に環境整備を行ってきたほか、子ども向け事業などにも活用されていたが、島へ渡る人が絶えて久しい。
 山田さんは「植物の豊かさは想像以上で、ぜひ親子を対象とした自然観察会などが行えたら。昔のように市民が気軽に渡島し、遊んだり体験したりできる島を取り戻すためにも、早めに市民参加型の活動に取りかかり、『私はこれを手伝います』『うちの団体はこんな協力ができる』と、いろんな方が珊琥島保護に名乗りを挙げてくれるような形にしていきたい」と話している。