亡き人への思い受け止め 移設後初の手紙供養会 広田町慈恩寺の漂流ポスト(別写真あり)

▲ 供養会で回向を務める古山さん(手前)

 陸前高田市広田町の慈恩寺(古山昭覚住職)で23日、境内にある私書箱「漂流ポスト3・11」宛てに各地から届いた、東日本大震災の犠牲者らに思いを寄せる手紙の供養会が行われた。同町赤坂角地にあった漂流ポストが今春、同寺に移設されてからは初めての供養会。元管理人の赤川勇治さん(75)=奥州市水沢=から役割を託された同寺の前住職・古山敬光さん(75)が回向を務め、「差出人の心が安らぐよう、これからも思いを受け止めさせていただく」と誓った。(阿部仁志)

 

 供養会には赤川さんが参列。1年前の供養会のあとに届いた手紙やはがきなどおよそ100通をとじたファイルを前に、古山さんが回向した。赤川さんも焼香、合掌し、手紙を預かった約10年と、差出人らの気持ちに思いをはせた。
 赤川さんは「この日を迎えてほっとした。ポストや手紙、供養などに関わるすべてを古山さんに受け止めていただき、安心している。こうした場所があるということを、若い人を含めいろいろな人に知ってもらいたい」と表情を和らげ、再訪を約束していた。
 赤川さんは、平成23年の大震災で大切な人を失い悲しむ人たちの心のよりどころとなるよう、26年に赤坂角地地内に漂流ポストを開設。以降、全国各地から手紙やはがきが寄せられ、その数は1000通余りにおよぶ。
 開設から10年を迎えた今年、毎年手紙の供養を依頼していた同寺に漂流ポストを移設。4月から、これまで赤川さんが担ってきた取り組みを古山さんが受け継ぎ、手紙や直接訪問する差出人らの声と向き合っている。
 古山さんは「赤川さんには、本来お寺でやるべきことを長年続けていただいた。お預かりした手紙に目を通し、やっと、差出人の気持ちが分かるようになってきた」と語る。
 境内の施設では、漂流ポストに届いた手紙をまとめたファイルを閲覧できる。亡き家族や友人らへのメッセージ、「漂流ポストがあったから、前に進めるようになった」という人たちの思いが垣間見られる。
 古山さんは「今を生きる人が一日でも、一歩でも前に進めるように。時の流れの中で〝漂流〟する思いをこれからも受け止め続ける。ぜひ、寺にも直接足を運びお参りに来ていただきたい」と話していた。