行政サービスの質 維持を 綾里地区で住民説明会 市出張所の廃止方針巡り

▲ 綾里地区で開催された説明会

 大船渡市による「綾里及び吉浜地域振興出張所の今後の運営に関する住民説明会」は25日夜、三陸町綾里の綾姫ホールで開かれた。出張所の窓口事務を郵便局へ委託する市側の考えに対し、出席した住民らが、行政サービスの質の維持や、郵便局を利用しやすい環境の整備を訴えた。
 市は本年度に入り、出張所の廃止方針について、7月には市議会全員協議会で、8月には両地区の公民館やまちづくり組織の各関係者へ説明。住民向けの同説明会は、22日にも吉浜地区拠点センターで開かれた。
 この日は約20人の住民が出席し、市側は渕上清市長、引屋敷努副市長らが並んだ。
 冒頭、渕上市長が「効率的で効果的な行政サービスの提供に向け、庁内で見直しを進めてきた。皆さまと力を合わせ施策に取り組んでいく」とあいさつ。次に市側が、検討の背景、現状と課題などの概要説明を行った。
 平成26年度と比較し、綾里地域振興出張所は年間窓口利用者数が26%、住民票など証明書の交付件数は41%、それぞれ減少。令和5年度の利用者数は1日平均で12・6人とピーク時の約半数で、吉浜と同様に利用者数が減少している。市では、今後も人口と税収の減少が続くとして、社会環境の変化に応じた施策を展開する必要があると説明した。
 出張所で取り扱ってきた窓口業務の一部については、綾里郵便局と吉浜郵便局への委託を検討。また、綾姫ホールと吉浜地区拠点センターの維持管理に向けた指定管理者制度を導入することで、委託手数料や指定管理料などの経費に対し出張所職員の人件費が抑えられ、1521万円の経費が削減されるとした。
 住民側は8人が発言。綾里郵便局の環境について、「3台分ほどの駐車場しかないので、利用者増による路上駐車の発生を避けるため、増設を検討してほしい」「高齢者の利用が増えると思うが、入り口は階段のみで、スロープがない」など、複数の住民が改善を望む意見を寄せた。市側も「窓口利用者が不便に感じないよう、対応を検討したい」とした。
 行政サービスの提供については、「同出張所には、事務処理などで親切な対応をしていただいたが、郵便局への委託後も同じく対応してもらえるか不安」と、サービスの質の低下を懸念する声も。市側は、職員が常駐し地域に根差したサービスを提供している郵便局の利点を説明し、高齢者やデジタル機器に不慣れな人でも対面で安心して手続きが受けられるとして、「出張所と同様の対応が可能と判断する」と回答した。
 また、「出張所廃止によって住民サービスが低下し、人口減少に拍車がかからないよう進めてほしい」という住民の声に対して、市は「人口減少により税収が減る中で、廃止は経費削減だけではなく、地域を持続化させる中で出た考え方」と説明した。
 渕上市長は「しっかりと意見を受け止めて整備を進める。さまざまな状況を伝えていただき、一つ一つ不安を解消していきたい」と所感を述べた。
 意見は、11月15日(金)まで市役所本庁や両出張所にある市民提言箱などで受け付けている。問い合わせは、市三陸支所(℡27・3111内線7101)へ。