及川さん(三陸町越喜来)が初優勝 第36回南部牛追唄全国大会 平常心で声を響かせ快挙

▲ 初優勝を飾った及川さん㊨

 大船渡市三陸町越喜来の及川久美子さん(67)が、岩泉町でこのほど行われた第36回南部牛追唄全国大会(同実行委主催)一般の部で優勝を飾った。一昨年の準優勝を超える快挙に、ともに民謡に励む仲間や地域住民らから祝福の声が寄せられている。(佐藤 壮)


 「田舎なれどもサーハーエー/南部の国はサー/西も東もサーハーエー/金の山コラサンサエー」と続く『南部牛追唄』は、藩政時代から岩泉地方で塩や海産物を南部藩の城下町である盛岡へ運ぶ道中、牛方たちによって唄い継がれ、全国で愛唱されてきた。大会は発祥の地・岩泉で毎年開催されている。
 今年は9月29日に行われ、一般、70歳以上、年少者の3部門に分かれて、計100人余がエントリー。一般の部には最多の約50人が出場し、予選で15人に絞られた。
 及川さんは予選を2位で通過し、15人による決勝は最後にステージに立った。「『南部牛追唄』は単調そうな曲に聞こえて、こぶしや節回しなど奥が深い。深く考えると、声がひっくり返る。リラックスした状態で臨むことができて良かった。いつも通りの歌声を心がけた」と語る。
 苦い思い出を克服し、初優勝を飾った。一昨年に準優勝となり、昨年も優勝を狙ったが、思っていた表現ができず、入賞を逃した。今年は、大会前から例年以上に「声出し」をして準備を重ねたうえで、平常心で臨んだ。
 優勝が決まった瞬間は「それはとてもうれしかった」と振り返る。大きなトロフィーや優勝旗とともに、副賞としてヨーグルトや牛肉など岩泉の特産品も贈られた。
 高校卒業後に民謡を始め、現在は県民謡育成団「桂友会」や住田三弦会、県民謡保存会大船渡支部に所属。週2回以上は稽古に励み、自宅でも自主練習を重ねる。東日本大震災直後は、民謡をためらう時期もあったが「いい唄を歌えば、喜んでくれる人がいる」と続け、職場退も挑んでいる。
 同支部として優勝者が出るのは初という。青砥幸雄支部長(70)=赤崎町=は「優勝は本当に難しい。電話で一報を聞いてびっくりしたし、うれしかった」と話し、祝福する。
 及川さんは、先月18~20日の3日間、埼玉県のさいたま市文化センターで開催された第64回郷土民謡民舞全国大会(一般社団法人日本郷土民謡協会主催)にも出場。シニア編一部で『沢内甚句』を披露して最優秀賞に輝き、シニア全体の決勝大会では2位となった。
 今後も各種大会や芸能舞台に立ち、仲間とともに磨きをかけた伸びのある歌声を響かせる。明るい笑顔を振りまきながら「いろいろな方に支えられ、本当にお世話になってきた」と感謝を忘れない。