台湾観光誘客 次の一手 大船渡・住田定住自立圏共生ビジョン 来月現地でモデルコース提案へ

▲ 大船渡市と住田町が昨年初めて参加した「日本東北遊楽日」。今年はより具体的なモデルコースを提案する

 大船渡市と住田町が締結した定住自立圏構想に基づき、両市町の事業所関係者らが、来月上旬に台湾を訪問し、訪日観光客の両市町滞在をアピールする。昨年に続き、東北への旅行促進に向けたイベントに参加するほか、旅行業者にも足を運ぶ計画。今夏は昨年の活動が生かされた形でまとまった団体客の来訪があったことから、両市町を巡る具体的なモデルコースを提案するなどして新規開拓につなげる。(佐藤 壮)

 

 定住自立圏は、一定の要件を満たした市(中心市)と近隣市町村が連携、協力し、必要な生活機能等を確保することで地域における定住の受け皿となるもの。両市町は、同市が生活機能の確保で中心的な役割を担う中心市となり、令和元年10月に定住自立圏形成協定を結んだ。
 協定に基づき、本年度まで5年間を期間とする共生ビジョンを策定。広域観光の推進では、外国人観光客向けの観光ルート造成や受け入れ体制の整備を図り、広域観光プロモーションを展開している。両市町における外国人の観光客入込数は平成30年は761人で、令和6年には1485人まで伸ばす目標を掲げる。
 昨年初めて、台北市内で旅行代理業・航空会社との商談会に臨み、2日間行われた「日本東北遊楽日」(一般社団法人東北観光推進機構主催)にも参加し、旅行に関心がある一般客らにアピール。翌日は、台北市内の旅行業者を訪問した。
 商談会では、予想を上回る27社の現地担当者と対談。日本東北遊楽日では、パンフレットやバッグ、クリアファイルの配布が人気を集め、ブース内で用意した「恋し浜のホタテ貝殻絵馬」体験もにぎわった。
 訪問した旅行業者によるツアーの一環で、今年8~9月には450人を超える旅行客が大船渡などを訪れた。昨年における台湾外国人観光客の入り込み数は約480人で、大きな成果につながった。
 今年も共生ビジョンの一環で「日本東北遊楽日」に出展。大船渡市内2事業者、住田町内1事業者が参加し、両市町や市観光物産協会の担当者らが同行する。12月5日(木)に出国し、6日(金)には、台湾の台北市内で旅行代理業・航空会社との商談会に臨む。
 「日本東北遊楽日」は7日(土)と8日(日)に開催。今年も大船渡市と住田町をPRするブースを設け、パンフレットなどを配布する。昨年好評を博した「恋し浜のホタテ貝殻絵馬」の体験を設ける。
 さらに9日(月)と10日(火)には、台北市内の旅行業者を訪問。両市町の強みをアピールする。
 台湾では大船渡・住田の知名度がまだ低い中、昨年は観光・体験メニューの具体的なアピールで課題を残した。台湾からの観光客で多いのは、仙台空港を利用した4泊5日程度の滞在。この間に東北を巡る行程が組まれる中、1日程度かけて両市町に足を運ぶ流れを見据える。
 提案するモデルコースでは「自然の美しさを身近に感じる魅力体験」として、特に50~60代の〝ゆったり旅〟を楽しみたい層を意識。夏から秋にかけ、仙台方面から入り、滞在後は県内近隣の観光地に向かう流れを想定している。
 個人・団体とも大船渡市内で昼食をとり、碁石海岸での散策や穴通船を楽しんでもらい、市内の宿泊施設を利用。キャッセン大船渡などの飲食店を巡る「バーホッピング(はしご酒)」などを提案する。翌日は個人客には住田町の滝観洞を案内し、団体客には酔仙酒造の見学や三陸鉄道の乗車体験などを仕向けることにしている。
 台湾での活動に向け、今月5日に市役所で研修会が開かれ、日程などを確認しながら、意見を交わした。運営支援業務を担うエストゥーエスデザイン㈱(宮城県仙台市)の大津知士代表取締役はコロナ禍後における台湾人訪日客の消費額増加に触れたほか「すでに市場は成熟しているが、活動単価の上昇と地方への需要拡大が本格化していくと考えられる」と話し、期待を込めた。