地域医療の維持・発展を 気仙地域県立病院運営協 次期経営計画案の説明も

▲ 気仙圏域における県立病院の現況などを確認した運営協

 気仙地域県立病院運営協議会(会長・渕上清大船渡市長、委員24人)は5日、同市の県立大船渡病院で開かれた。年内の策定を目指す次期県立病院等の経営計画案や気仙地域の県立病院(大船渡、高田、住田地域診療センター)の運営状況などが報告され、出席者らが意見を交換。人口減少と少子高齢化が進み、病院経営も厳しさを増す中で、各病院や診療センターがそれぞれの機能を強化しながら3市町、関係機関と連携し、地域医療の維持と発展を図っていくことを申し合わせた。(三浦佳恵)


 同協議会は、県立病院の円滑な運営と地域住民の医療、保健衛生の向上を図ろうと設置。県議会や県、気仙3市町、医療、社会保険、社会福祉などの各団体から委員を委嘱している。
 この日は委員23人のほか、県医療局や各病院、診療センターの関係者らも出席。冒頭、渕上市長は「地方の医療環境が厳しさを増す中、県立病院に対する期待は一層高まっている。県立病院の経営計画や気仙地域の県立病院の運営などについて、忌憚のない発言をお願いしたい」と呼びかけ、大船渡病院の中野達也院長、県医療局の小原重幸局長もあいさつした。
 議事に入り、小原局長が令和7年度から12年度の6カ年を期間とする次期「県立病院等の経営計画(2025─2030)」の素案を説明。県立病院を取り巻く環境と経営状況、医師確保や持続可能な経営基盤を確立するための今後の方向性などを示した。
 この中で、気仙圏域は現在と同様に大船渡を基幹病院、高田を地域病院、住田を地域診療センターに位置付ける。そのうえで、大船渡は「機能集約・強化」病院として、循環器内科等の症例数を釜石と集約するなど、医療機能のさらなる強化を図る。
 高田は基幹病院と連携し、主に回復期の機能や在宅医療、検診などの身近な医療を提供。住田は地域におけるプライマリケア(初期診療)領域の外来医療に従事し、在宅医療にも取り組みながら高田と同様に地域包括ケアシステムの一翼を担う。
 続いて、気仙地域県立病院群の運営状況が報告された。それによると、10月1日現在の病床数は大船渡359床、高田60床で、大船渡は9月に1病棟を休止したことに伴い、従前から49床減った。常勤医師数は大船渡が47人(うち臨床研修医5人)、高田が7人(同1人)、住田が1人。
 本年度(9月末現在)における1日平均の外来患者数は、大船渡599・8人、高田130・2人、住田45・5人の計775・5人で、いずれも前年度を下回った。入院患者数は大船渡219・9人、高田32・3人の計252・2人で、どちらも前年度を上回った。
 5年度における3病院の経常収支は、大船渡が7億2240万円、高田が125万円、住田が5668万円と、いずれも損失を計上。3病院を合わせた気仙医療圏でみると、7億8033万円の赤字となった。
 続いて、中野院長、高田病院の阿部啓二院長、住田地域診療センターの工藤正一郎副センター長が現況を紹介。中野院長は入院患者の減少や病床利用率の低下に伴い1病棟を休止したことや、4月に運用を開始したドクターカーの実績などを挙げ、高田との連携、地域協働の重要性にも言及した。
 阿部院長は、10月に地域包括ケア病床を42床に増やして在宅復帰支援に力を入れていることなどを説明。工藤副センター長は町内唯一の医療施設として、町や関係機関と連携した医療提供について示した。
 委員らは、「経営計画を立てるに当たっては、収支バランスだけではなく、病院としてどう利用され、そこに住む人たちがどういった利益を被っているかを分析することも必要ではないか」「地域医療を守るために、医療の面からも内陸部とをつなぐ道路整備への支援を求めたい」などと意見。このほか、高齢化が進む中での病院への移動手段確保、診療の待ち時間を分かりやすくするための方策などを求める声が寄せられた。