古里の山 広く発信 五葉山グッズ手がける 新沼さん(日頃市町出身)夫妻 あす軽トラ市にも出店
令和6年11月9日付 7面
大船渡市日頃市町出身で、盛岡市在住の会社員・新沼滉さん(29)=大船渡市総合戦略推進会議委員=は今春から、「五葉山アソボーズ」という〝屋号〟を掲げ、地元の名峰・五葉山(1351㍍)や、ふもとの地域をPRする活動に取り組んでいる。今年4月末に行われた山開きに合わせ、同山中腹に位置する「しゃくなげの湯っこ五葉温泉」でオリジナルグッズの販売を始めたほか、将来的に同町一帯を魅力あるエリアとするため、里山再生などさまざまなことに挑戦しようとしている。(鈴木英里)
五葉温泉で販売されているのは「Goyozan 1,351m」と記されたピンバッジ(750円)と、8㌢四方のステッカー(2種類・各200円)、新沼さんが「夜な夜な自分で豆をひいている」と笑う、自家焙煎のドリップコーヒーバッグ(150円)などだ。デザインは、盛岡市に「佐東恵デザイン事務所」を構える妻の恵さん(40)=秋田県横手市出身=が手がけた。
注目はピンバッジだ。五葉山のなだらかな尾根と斜面に受ける光を、若草色とエメラルドグリーンの2色で表現。初夏には赤坂峠付近にツツジが群生することから、一部がピンク色になっているのが心にくい。大きく描かれた花は、同山名物であり山小屋にもその名を冠するシャクナゲだ。台紙にもこだわり、生息するシカの姿、山頂から見晴らせる海の波頭を描いた。「山からふもとの暮らしへとつながっていくさまを表現したかった」と恵さんは言う。
このバッジとともに「五葉温泉店内にて販売中」と記したポスターをしゃくなげ山荘に掲げたところ、登山者の間で評判に。たまたま同温泉休館日に訪れた人から、後日「ピンバッジを送ってほしい」と連絡が入るなど、手応えを感じている。
新沼さんは日頃市中から大船渡高校、岩手県立大に進み、現在は盛岡市内に勤務する。若い人材が地元へ戻ってこない現状を打破したいと、キャッセン大船渡で今年、「未来を考える屋台『アラサーOfunato』」と銘打ったイベントを2回開催。30歳前後(アラサー)の人たちが屋台で飲みながら、思いを語らえる場を用意した。
常日頃から「古里のためにできることを」と考えてきた新沼さんが併せて目指したのは、地元を発信すべく〝形あるものをつくる〟ことだった。
「登山が趣味で全国いろんな山を登ってきたが、大抵の山にはピンバッジに代表されるオリジナルグッズがある。そこへ行った証明としても、あとで見返して思い出してもらうきっかけとしても、大好きな五葉山に関する商品をつくりたかった」と新沼さん。ドリップコーヒーも、自身が山頂で湯をわかして入れるコーヒーが好きであることから「ぜひ山登りの際に飲んでほしい」と願って製品化した。
恵さんは「彼は古里への思いが本当に強く、その企画力に私も刺激を受ける。お互い旅行が好きで、旅先では思い出の品となるものを買ったりしてきた。今度はそんなワクワクを自分たちで届けられたら」と語る。新沼さんも妻のデザインについて「五葉山のいいところが詰まった、本当にいい仕上がり」と自信をのぞかせる。
「アソボーズ」という〝複数形〟の名称には、自分一人ではなく、やがて皆を巻き込んで、集団で楽しみながら・遊びながら地域を盛り上げていけたら――という思いを込めた。
新沼さんは今後、耕作放棄地を観光コンテンツ化する「里山リノベーション」に取り組み、自然と共生する日頃市を次世代へ手渡していきたいとこの先を見据えている。その手始めとして、「五葉山グッズが地域を知ってもらう一助になれば」と願う。
同温泉ではこのほか、「ヒコロイチ」「ゴヨウザン」のロゴ入りTシャツを1枚3500円で販売。今後はステッカー・ピンバッジ・コーヒーのセット(1500円)や、トートバッグ(700円)の取り扱いも検討中だ。
また、新沼さんは同町の旧日頃市中学校グラウンドで10日(日)に開催される「ひころいち文化祭&軽トラ市」にも出店することにしている。