光り輝く〝海の小判〟 今季アワビ漁がスタート 気仙沿岸 大船渡、吉浜、 広田3漁協で(別写真あり)

▲ アワビ初開口の活気にあふれる集荷場での選別作業=根白漁港

 気仙沿岸で9日、今季のアワビ漁がスタートした。同日は大船渡市漁協管内の赤崎、吉浜漁協、陸前高田市・広田湾漁協管内の広田、小友地区で口開け。冬の気配を感じさせる冷え込みとなった早朝から、漁業者らが漁船で海に繰り出し、〝海の小判〟を次々に漁獲。東京電力福島第一原発のALPS処理水海洋放出に伴う中国の禁輸措置や、海水温上昇が成育に与える影響も懸念される中、今後の収量や価格の動きに注目が集まる。(菅野弘大)

 

 11月1日に解禁となるアワビ漁は、各漁協、地区で天候やなぎの状況などを踏まえて開口日が決められる。今年は、気仙全体では昨年に比べて6日早い初開口となった。
 このうち、大船渡市三陸町の吉浜漁協(寺澤泰樹組合長)は専属での開口。漁開始の午前6時30分、朝日が差し込む海上で待機していた漁船で、漁業者らが一斉に漁を始め、箱めがねで海中をのぞき、長いカギさおを巧みに操りながらアワビを捕っていった。
 集荷場の一つである根白漁港では、午前9時から集荷が始まり、漁を終えた船が続々と帰港。午前10時ごろに選別作業のピークを迎え、慌ただしさに包まれた。漁獲したアワビを見せ合い、漁況について会話を交わす漁業者らの姿も見られ、この時期ならではの活気ある光景が広がった。
 この日の同漁協の収量(1号品)は819㌔で、昨年の初日を100㌔以上下回った。漁業者からは「アワビが痩せている」「ものがいない」といった声や、海水温の上昇で餌となる海藻が少ない現状を指摘する声も聞かれた。気仙の他地区の収量は、赤崎が489㌔、広田(1~3区)が842㌔、小友只出が95㌔だった。
 福島第一原発の処理水海洋放出を受け、中国政府は昨年8月以降、日本産水産物の輸入を停止。禁輸措置の長期化により、県産アワビの取引価格も低迷するなど、大きな影響を受けている。
 今年9月には、中国が禁輸措置を緩和し、安全基準に適合した日本水産物の輸入を徐々に再開することで合致したが、具体的な時期は示されていない。
 気仙では今月、綾里を除く4漁協で開口を予定。先月24日に事前入札会が行われ、水揚げ予定数量は前年同期を下回る17・8㌧、10㌔当たりの平均価格は5万8660円で、前年の7万9000円台から26%下落した。
 気仙における平均価格の最高値は、昨年に続き吉浜漁協(専属)の6万5200円だったが、昨年から2万7800円下落。選別作業に加わった寺澤組合長(74)は「価格の下落は、中国の禁輸措置が大きく影響している。禁輸は解かれると聞いているが、それがいつになるかは見通せず、一刻も早い再開を望んでいる」とし、「アワビは冬のボーナスとも言われたが、近年は海水温の上昇で餌の海藻が少なく厳しい状況。親潮が下がってきて、少しでも水温が低くなってくれることを願う」と話していた。