復興の先見据え新名所を 東北最大級の桜並木目指す 有志組織が植樹会 遺構周辺に苗木28本 あす震災13年8カ月(別写真あり)

▲ 順調な生育を願いながら苗木を植える親子

 陸前高田市のさくらの杜プロジェクト陸前高田協議会は9日、同市の高田松原津波復興祈念公園内でサクラの植樹会を開いた。市民とともに東北最大級のサクラの名所を築こうという壮大なプロジェクトの記念すべき1回目の植樹会。東日本大震災の発生から、あす11日で13年8カ月。県観光統計によると、令和5年における同市への観光入込客数は127万人に上り、震災後初めて本県沿岸・県北エリアの中でトップとなった。復興の先を見据え、新たな観光の目玉を生み出そうと、関係者は桜並木形成に踏み出した。(高橋 信)

 

5年の市観光客127万人 本県沿岸・県北で初1位

 

 同協議会は市内各種団体・企業、NPOなどで構成し、昨年10月に発足。市観光物産協会(熊谷正文会長)が会長団体、陸前高田商工会(伊東孝会長)が副会長団体を務めている。
 同協議会主催の植樹祭は今回が初めてで、国交省の「道・絆プロジェクト」の支援を受けて企画。市民ら約50人が参加した。
 植樹場所は国道45号沿いにある震災遺構「タピック45(旧道の駅高田松原)」周辺の県管理地。高さ約3㍍あるオオヤマザクラ、オオシマザクラ、ヤマザクラの苗木28本を力を合わせて植えた。
 岩手大人文社会科学部の稲邊心音さん(2年)は「協力して植えることができた。陸前高田を訪れた人が、サクラを見て笑顔になってもらえたらうれしい」と苗木を見上げた。
 同協議会は今後10年ほどかけて、川原川沿いやかさ上げしていない市有地、祈念公園内などのエリアに、3000本程度のサクラを植える構想。今年3月にはプロジェクトのキックオフと位置づけ、地元の小中学校を卒業する児童・生徒ら約50人が川原川公園に苗木約50本を植えた。最終的な桜並木の形成は数十年後を見込んでいる。
 熊谷会長は「将来、桜並木を散策する際の起点ともなるように願いを込めて、今回の植樹場所を選んだ。先の長いプロジェクトとなるが、その第一歩をきょう踏み出すことができた。震災によらない誇れるまちを、みんなでつくっていきたい」と見据える。
 県の令和5年版観光統計によると、同市の同年観光入込客数は127万6320人で、前年比29・9%(29万3407人)増。沿岸・県北エリア17市町村で最多となった。
 市によると、大幅な増加の要因は、市立博物館や県立陸前高田オートキャンプ場「スノーピーク陸前高田キャンプフィールド」がオープンしたことに加え、新型コロナウイルスの5類移行を追い風に、各施設の客足が伸びたことなどが挙げられるという。
 一方で、道の駅高田松原が65万7900人、震災津波伝承館が24万8755人(人数はともに市調べ)と、高田松原津波復興祈念公園内の主要施設が、入込数全体の約7割を占めており、それ以外の施設の客足増、新たな観光コンテンツの創出などが求められる。さらに、堅調な集客力を生かした周遊型・滞在型観光の推進、観光ビジネスによる地域経済の活性化(地域経済循環)が今後の課題となりそうだ。
 市地域振興部の村上知幸次長は「沿岸でトップとなったことは非常に喜ばしいこと。これから先を見据え、さくらの杜プロジェクトなど新たな動きも始まった。市としても観光振興や交流人口増のため、関係機関・団体と連携し、さらに人を呼び込めるよう努力していきたい」と意欲を語る。