秋サケ 過去最低下回る出足 10日時点の県内漁獲速報 大船渡は前年同期の半分に

▲ 漁獲数の減少が続く秋サケ。大船渡市魚市場への水揚げは前年同期の約半分に落ち込む(13日)

 県農林水産部水産振興課は、今月10日時点の秋サケ漁獲速報を発表した。県全体の沿岸・河川累計捕獲数は1万601匹で、前年同期の約7割にとどまる。大船渡市魚市場への水揚げ数も前年同期の約半分と、過去最低だった昨年をさらに下回る水準で推移するなど厳しい状況に陥っている。稚魚育成に向け、河川捕獲した魚からの採卵作業も始まっているが、年々減少している回帰量に電気料金、餌代の高騰なども重なり、現場の実情は苦しさを増す。
 本県における今季の沿岸漁獲数は5041匹(重量12・5㌧)で、前年同期の9202匹(同24・6㌧)に対して54・8%と6割に満たない。河川捕獲数は5463匹で、前年同期の101・7%とわずかに上回ったが、これらを合計した累計捕獲数は71・4%と、前年同期より4200匹ほど少ない。
 沿岸漁獲の重量は、過去5年平均(187・5㌧)の6・7%。金額も1644万円と伸びず、同平均(1億7279万円)の9・5%となっている。
 魚市場別の漁獲数を前年同期で比較すると、いずれも前年を割り込む状況に。今季の沿岸漁獲数累計トップの久慈でも51・9%と、回帰量減少の深刻化が顕著に表れている。
 大船渡では、10月下旬から磯建網漁を中心に量がまとまりだしたが、今季の沿岸漁獲累計は456匹で、前年同期の51・8%。1㌔当たりの平均単価は1232円で、前年同期よりわずかに高い。
 気仙における河川捕獲数をみると、吉浜川が38匹(メス10匹、オス28匹)、綾里川が58匹(メス28匹、オス30匹)、盛川が116匹(メス47匹、オス69匹)、気仙川が1183匹(メス442匹、オス741匹)で、いずれも前年同期より少ない。採卵数は吉浜川が1万1000粒、盛川が8万9000粒、気仙川が112万8000粒。盛川がわずかに前年同期を上回っているが、吉浜川、気仙川は下回っている。
 大船渡市の盛川漁協(佐藤由也組合長)では、今月に入ってから盛川に回帰したサケの採卵作業が始まっており、12日にも作業を実施。受精卵は、陸前高田市の広田湾漁協の施設に移して管理され、育った稚魚は盛川漁協の施設に戻し、来年3月ごろの放流につなげる。
 県さけ・ます増殖協会が定めた本年度の稚魚放流計画数は、県全体で7500万匹。気仙では1500万匹の計画を見込むが、北海道をはじめ、全国的に不漁が続いている影響で、昨年度のように県外からの移入卵に頼ることが厳しい見通しとなっている。
 佐藤組合長は「不漁は何年も前から言われてきたことで、海の温暖化がサケの遡上に影響を及ぼしている。今年は県外からの移入卵も手に入りそうになく、厳しい。県のサケ・マス増殖・ふ化事業は終止符を打つべき時が来たのではないか」と現状を重く受け止める。