「地元産消費で経済循環を」 地消地産シンポジウム 青年会議所が主催 地域エコノミストの藻谷さん講演(別写真あり)
令和6年11月19日付 7面
陸前高田市の陸前高田青年会議所(菅野龍介理事長)による地消地産シンポジウム「藻谷浩介さんと語る!陸前高田と住田の未来」は17日、高田町の市コミュニティホールで開かれた。地域エコノミストで、同市政策アドバイザーを務める藻谷浩介さん(㈱日本総合研究所主席研究員)を招き、基調講演やパネルディスカッションを展開。藻谷さんは、地元産を消費あるいは利用することで地域の経済循環を図る重要性を示し、参加者らは持続可能な地域や企業の発展に向けたヒントとした。 (三浦佳恵)
シンポジウムは、地域の可能性や持続可能なまちづくりのあり方を通し、地域の未来のためにできることを考えようと企画。気仙地区などから約60人が参加した。
講師の藻谷さんは、山口県出身。平成合併前の全3200市町村、海外133カ国を自費で訪ね、地域特性を多面的に把握し、地域振興や人口成熟問題、観光振興などを研究。著作には『デフレの正体』『里山資本主義』などがあり、講演活動にも取り組んでいる。令和5年からは、市政策アドバイザーを務めている。
前半は、藻谷さんが基調講演「陸前高田と住田の未来」を展開。この中では、陸前高田市と住田町が平成30年に外から稼いだ金額が年間142億円とした一方、ごみ処理や教育、福祉関係などで市外に払っている金額は619億円にのぼると指摘。商業・飲食関係だけでも125億円になるとした。
そこで、藻谷さんは地域外からの売り上げ増に力を入れ、併せて住民や地元企業が地元産を消費、利用することで地域経済を循環させる必要性に言及。「陸前高田市と住田町の住民1人の年間消費額を200万円とすると、その1%に当たる2万円を地元産品で消費すれば4億円が地元に回る」と述べ、雇用200人分の額に相当することも示した。
そのうえで、「地域と地域企業が今後も続いていくための道は『地消地産』。地元で消費するものは極力地元産に。1%でいいから地元のものを買うだけで、大きな額になる。ほんの少しの努力で、外に行くお金を減らせる」と提案。売り上げではなく、経済循環を拡大させるよう強調し、主な産業における地消地産の取り組み例を挙げた。そして、「どれが陸前高田産、住田産かを考えるところから始めてみては」と呼びかけた。
後半のパネルディスカッションでは、㈲橋勝商店代表取締役の橋詰真司さん、陸前高田しみんエネルギー㈱代表取締役の小出浩平さん、住田住宅産業㈱代表取締役の中野和人さんがパネリストとして登壇。藻谷さんがコーディネーターとなり、「魅力的で持続可能な地域に向けて」をテーマに意見を交わした。
パネリストの3人は、それぞれの事業内容を挙げ、今後の展望などを紹介。橋詰さんは〝食の循環〟を意識した総菜の製造、販売や、まちなかのにぎわいづくりについて語った。
小出さんは、地域内の再生可能エネルギーを増やして地元の雇用と経済の活性化を目指す取り組みを、中野さんは家屋や公共施設、遊具などに地域材を活用した例などを示した。
参加者らは講演やシンポジウムにじっくり耳を傾け、積極的に質問も。持続可能な地域のあり方を改めて考える機会としていた。