被災地支援の〝実り〟喜ぶ 名古屋の原さんと平岡さん 名市大卒の陸前高田出身者と再会(別写真あり)

▲ 名古屋市の支援関係者らと語り合う陸前高田出身者ら(右列)

 愛知県名古屋市職員の原誠さん(60)と、名古屋市立大学病院(以下、名市大病院)の元看護部長・平岡翠さん(67)は18日、陸前高田市出身の同大卒業生らが働く大船渡市の県立大船渡病院(中野達也院長)を訪れた。卒業生らとの再会を喜ぶとともに、地域医療の現場で活躍する姿から、名古屋での学びが生かされていることを確認。東日本大震災後の名古屋市の「行政丸ごと支援」からつながった縁をより実りあるものにしようと、今後の取り組みについても語り合った。(阿部仁志)

 

 名市大看護学部は、東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市の復興を後押しする名古屋市からの要請を受け、平成25年度から5年間、陸前高田市出身者を対象とした特別枠での推薦入試を実施。毎年2人、計10人が入学し、卒業後は、看護師や保健師、助産師として気仙内外で活躍している。
 陸前高田市と名古屋市、名市大病院をつなぎ、推薦入試制度導入に尽力したのが、当時、同市総務局総合調整部(被災地支援)主幹を務めた原さん。平成26年に両市が友好都市協定を結んだことも受け、今後のより良い関係づくりにつなげようと入職した卒業生らとの面会の機会を考え、新型コロナウイルス禍を経て今回実現した。
 陸前高田市を訪れたのは、原さんと、名古屋での入学生らの学びと生活をサポートした平岡さん。大船渡病院での面会には、支援を縁に原さんと連絡を今も取り合っている元米崎中校長の阿部重人さんと、元小友中副校長の菅野祥子さんも立ち会った。
 大船渡病院で働いている名市大卒業生は6人。このうち5人が、原さん、平岡さんらと対面し、5年以上ぶりの再会を喜び合った。
 原さんと平岡さんは、現在の仕事について卒業生一人一人に質問。返答から、大船渡病院の精神科や救命救急センター、在宅医療の現場などで研さんを続けていること、先輩スタッフとして後進指導にあたっていること、地域医療の充実に向けてそれぞれが自分の考えを持ち行動していることなどを知り、「立派に成長してくれた」と表情を和らげた。
 推薦入試の支援制度を振り返った卒業生らは「あの制度があったから、自分の世界が広がった」と感謝。名市大病院や名古屋市との関係で今後期待することについては、「自分たち以外の人にも名市大病院との交流、つながりができてほしい」などと伝えていた。
 推薦入学第1期生で助産師の松野綾夏さん(30)=高田一中卒=は「原さんや平岡さんと話していて懐かしい気持ちになり、うれしかった。また、初心に帰り、身が引き締まる」と再会を励みにした様子。
 2期生の看護師の黄川田純愛さん(29)=小友中卒=は「周囲の方々に期待していただいていることが伝わり、ますます頑張りたいという気持ちになった。得たものを地元に還元しつつ、名古屋とのご縁がこれっきりにならないようにしていきたい」と語る。
 現在、原さんは名古屋市からの派遣で名古屋競輪組合事務局長を、平岡さんは愛知県蒲郡市民病院管理看護支援監を務めている。それぞれ、震災直後とは異なる役職に就いているが、「これからも支援の行く先を見届け、自分にできることをしていきたい」と思いを寄せ続ける。
 原さんは「もっと早く卒業生の皆さんに会いたかったが、コロナがありこの時期となった。今回たくさんの貴重な話を聞くことができたので、持ち帰って名古屋市でも共有する」と語った。
 平岡さんは「学生を受け入れた初年は正直どうなるのかという思いもあったが、あの時期を乗り越え、今回すごく成長している皆さんを見て〝やってよかった〟と感銘を受けた。陸前高田と名古屋、距離はあるが、これからもつながりを持ち続けたい」とし、エールを送っていた。