R12年度の温室効果ガス排出量目標 H25年度比で55%削減へ 市が温暖化対策計画案まとめる
令和6年11月24日付 1面
陸前高田市は、令和7~12年度の6年間を期間とする市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)の素案をまとめた。12年度における温室効果ガスの排出量について、平成25年度と比べて55.2%削減する目標。市は9月、環境省の「脱炭素先行地域」に選定されており、同実行計画には先行地域として展開する脱炭素化の事業を盛り込んでいる。本年度内の策定を目指す。(高橋 信)
目指す将来像は「みんなで創り 次世代につなぐ ゼロカーボンシティ 陸前高田」。温室効果ガス排出量に関する基準年度(平成25年度)と、目標年度(令和12年度)は国、県の計画との整合を図って設定した。
素案によると、25年度の温室効果ガス排出量は二酸化炭素換算で15万6100㌧。内訳は産業部門が3・02㌧、家庭部門3・99㌧、運輸部門3・98㌧などだった。
令和3年度の実績値は14万800㌧で、25年度対比で9・8%減。部門・分野別の最多は運輸部門の3・73㌧で、全体の26・5%を占めている。
12年度の目標値は、電力の脱炭素化、市民の削減努力、二酸化炭素の森林吸収量などを加味して設定。合計で6・99㌧とし、平成25年度から半減させる。部門・分野別にみると、産業、業務、家庭、運輸の各部門は25年度の2~3㌧台から、1~2㌧台に削減する。森林吸収量は2・29㌧と推計した。
温暖化対策の施策は、▽再生可能エネルギーの導入拡大▽省エネルギーの推進▽脱炭素まちづくりの推進▽循環型社会の形成▽環境意識の向上──を柱に展開する。
重点施策は▽市街地の脱炭素化▽森林・水資源の利活用▽漁業の脱炭素化──の三つ。
このうち「市街地の脱炭素化」では、自家消費型の太陽光発電設備導入の目標値として、一戸建て住宅246件、民間施設45件、公共施設5件を掲げる。東日本大震災の被災跡地では果樹栽培と太陽光発電を両立する「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」を導入する。
高田浄化センターそばには、下水汚泥と生ごみを原料とするメタン発酵バイオガス発電設備を設ける。発電後に残った消化液を液肥として農家に供給し、肥料費の低減につなげる。
横田地区では蓄電設備や太陽光発電設備を設置し、災害時などに電力会社からの電気が途絶えても地域内の電力を供給する送配電システム「地域マイクログリッド」を構築する。
「森林・水資源の利活用」では、森林クレジットを創出・販売し、持続的な森林経営の財源に充てる。横田地区では小水力発電システムを取り入れる。
「漁業の脱炭素化」では、広田湾の藻場を再生し、海中で吸収された二酸化炭素をクレジット化して売却する「Jブルークレジット」を創出する。
市は昨年1月、二酸化炭素実質排出量ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」となることを宣言。同年3月に、行政の事務・事業に関する温室効果ガス排出量の削減策をまとめた同実行計画(事務事業編)を策定した。
区域施策編はゼロカーボンシティ実現に向けて策定するもので、事務事業編と異なり、市民・団体、事業者、行政などあらゆる主体を取り組みの対象とする。市は9月に脱炭素先行地域に選定されており、国の手厚い財政支援を受けながら、脱炭素化の取り組みを推進していく。計画案に対する意見公募(パブリックコメント)は来年1~2月に行う予定。
温室効果ガス排出量の削減目標や内訳は別掲の通り。