再会喜び 未来へ想いはせる イコウェルすみたで 居住者と邑サポートの同窓会(別写真あり)
令和6年11月26日付 1面

住田町の一般社団法人・邑サポート(奈良朋彦代表理事)による「住田の仮設住宅同窓会」は24日、世田米の「仕事と学び複合施設」(イコウェルすみた)で開かれた。東日本大震災後に同町の木造仮設住宅ですごした当時の居住者らが再会を喜ぶとともに、かつての仮設住宅を整備し震災伝承などに利活用する同所の未来にも思いをはせた。(齊藤 拓)
震災発生を受けて同町は応急仮設住宅を建設。世田米の町営住宅跡地の火石団地に13戸、旧住田幼稚園跡地の本町団地に17戸、下有住の旧下有住小学校校庭の中上団地に63戸がそれぞれ建てられ、ピーク時には91世帯が入居した。令和2年7月に全世帯が退去してからは、本町団地跡地の整備と仮設住宅の活用が進み、昨年5月にイコウェルすみたとしてオープンした。
同窓会は、邑サポートの法人化10周年を機に、かつて町内の仮設住宅に入居していた人や関係者が再会する機会として開かれた。
元居住者の約20人が町内外から続々と同所を訪れると、同法人のメンバーも含め、お互いに顔を懐かしみながら固く握手。「いろいろ世話になったね」「今後も元気でいましょう」と声をかけ、再会を喜んだ。
引き続き、奈良代表の案内で同所を見学。木造仮設を再現した展示棟では、久々に見る仮設住宅の内部に「こんなに狭かったんだね」と声を上げた一方で、長期滞在者向けに整備した滞在体験棟では、より暮らしやすくなった内装に驚くなど、活用ぶりにも理解を深めた。
また、奈良代表は供用棟で、これまで同法人が行ってきた団地内外の支援や町の地域づくりなどの活動を振り返った。このほか、毎年3月11日に祈りをささげる場として開いている「はなよせの会」や、防災教育プログラムの開発といった、同法人が行っている「震災の記憶・つながりの継承」も紹介した。
その後は居住者と同法人が歓談しながら、近況や現在の仕事を語り合い、今後も互いに前を向いて生きる気持ちを一つにした。
陸前高田市高田町の小林捷義さん(85)は被災後に本町団地に入居。この日は妻とともに足を運び、「住田に木造の仮設住宅ができると聞き、知人の紹介を受けて入居した。他にも陸前高田の人がいたのでさびしくなかったし、今も連絡を取り合っている」と住田での日々を振り返っていた。

同日は一般向けに展示棟の見学会も開かれた
一般向けの見学会も開催
イコウェルすみたでは同日、地震や津波への対策などを改めて考える機会として、一般向けの見学会も開かれた。震災当時を知らない人に向け、気仙の状況や同町の木造仮設住宅の記憶を伝承するコンテンツづくりも進んでいる。
展示棟では、震災後の住田の後方支援や、仮設住宅団地でのコミュニティー活動の記録を展示している。
来場者に対し邑サポートの奈良代表や仮設住宅の元居住者が、「子どもや祖父母のいる家庭は手狭で、リビングのこたつを取った場所に布団を敷いた」といった当時の暮らしを説明。
また、音楽家の坂本龍一さんが代表を務めた一般社団法人モア・トゥリーズ(東京都)が、同町の仮設住宅のために寄付したペレットストーブを実物の展示とともに紹介するなど、震災をきっかけに生まれた縁も紹介された。
同法人が開発を進めている、同所の敷地を模したシートに仮設住宅の模型を配置するワークショップもお披露目されたほか、災害ボランティアを題材とした災害支援シミュレーションゲームも行われ、参加者は災害直後の状況をより現実的に想像しながら、学びを得ていた。
参加した陸前高田市の公務員・小野寺誠さん(32)は「被災地といえば陸前高田や大船渡と考えがちだが、住田が後方支援の役割を果たしてきたことを知れた。シミュレーションゲームも明確な答えがないものなので、考えさせられる」と話していた。